2008年7月23日水曜日

理科再興(4)副教材作り 指導力向上

(読売 7月11日)

授業に、副教材を上手に取り込ませる工夫がある。
千葉県船橋市立飯山満中学校で5月に開かれた、
市内の中学校理科教員の研究会では、
約20人がA4判の野草カードを手に校庭を見て回った。
「オランダミミナグサはハコベと似ていますが、
全体に毛が生えています。ハコベはつるつるです」。

カードの作成者、千葉県立中央博物館の上席研究員、
斎木健一さん(46)が説明。

カードで紹介された野草は、21種類しかない。
日当たりと水はけがよく、年に数回は雑草として刈り取られてしまう
校庭の野草は、日本列島の北と南の端以外、あまり違いがなく、
種類も少ない。
カードの野草は、都会でも地方でも大半が見つかる。

教員にとって、春に多い自然観察は難題の一つ。
新クラスを受け持ってから時間がなく、子供の質問に答えられないと
恥ずかしいという思いがある。
図鑑は種類が多すぎて、植物の分類などを知らなければ
正解にたどりつけない。

斎木さんは、博物館で植物担当だが、専門は化石。
市民の自然観察に同行した際、「この花は何?」という
素朴な質問に答えられなかった苦い経験を持つ。
教員にも同じ悩みがあると知り、野草カードという副教材作りを思い立った。

カードは、県内の希望する教員に配布しているほか、
博物館のホームページで作り方や利用法を解説。
博物館では、季節や葉の形、特徴から約200種類の野草を
検索できるデータベースも作った。

新学習指導要領は、小学3年で「身近な自然の観察」を加えるなど、
観察や日常生活と関連した理科を重視。
斎木さんは、「全国の教員が、自信を持って自然観察授業が
できるようになってほしい」と願う。

地域密着型の「副教本」を独自に開発したのは、愛知県犬山市。
5年前から小3~小6の各学年で作っている「理科だいすき」。
現行の指導要領で、理科の内容が大幅に減らされたことに、
市教委や市内の理科教員らが抱いた危機感が原動力に。

「犬山の地層」、「木曽川へ行こう」など、地元の自然を学び、
市内の日本モンキーセンターでサルを観察するなど、
地域性を生かしている。
「骨格模型を作る」など、指導要領から外れていても教員が重要と
考えた内容も盛り込んでいる。

副教本作りは、中学校の理科教員も参加、中学の学習内容との連続も意識。
掲載写真の大半は、教員の撮影。
毎年6月ごろから、翌年の副教本作りが始まる。
前年の副教本について、授業で使いやすかった点や悪かった点を評価、
原則として毎年改訂。
「編集担当の教員は、常に最新情報の調査や資料集めをする。
こうしたことが、教員の力量を高めることに」と、
昨年の副教本の編集に当たった市立東小学校の相沢陽一校長(60)。

◆副教材

副読本、地図、資料集、実験器具など教科書を補助する教材。
検定を受ける教科書と違い、教材・教科書会社、教育委員会、
学校などが独自に作る。
犬山市では、算数と理科の教材を準教科書的な意味で、副教本と呼ぶ。
国は、新学習指導要領への移行に伴って、
新たに指導が必要な内容の教材を制作中で、これは補助教材。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080711-OYT8T00239.htm

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