2008年7月20日日曜日

[第3部・中国](上)家族恋しい「金の卵」

(読売 7月9日)

湖北省黄石市の程立皋さん(47)一家の自宅は最近、
以前の3倍の広さとなった。
仕事も、妻の徐春香さん(41)がレイオフ(一時解雇)された後、
400元(約6000円)の月収で家計を支えてきた港湾関係の
会社勤めから、スポーツくじの販売店経営に。
月収は、2倍以上に増えた。

すべては、一人娘の活躍による。
中国のお家芸、女子体操のエース程菲(20)。
2005年に編み出した跳馬の高難度オリジナル技は、
「程菲跳び」と名付けられた。
北京五輪で金メダル有力候補と期待されるスター選手の両親として、
市の仲介により、新居と条件の良い仕事が与えられた。

以前の住まいは、壁がはがれ、レンガがむき出しになった
38平方メートルのアパートの一室。
11歳で省のチームに入った程菲は、寄宿舎住まいで、
13歳でナショナルチーム入りしてからは、実家に戻ったことはない。

衣食住は、省と国が保証する。
省の代表選手となってからは、1000~2000元の月給。
その給料は欠かさず、父母に送り続けてきた。
徐春香さんが専用に作った銀行口座の残高は、数万元に上る。

新居は、2LDK128平方メートルの高級マンション。
娘が足を踏み入れたことのない寝室のベッドの上には、
程菲の大きな肖像写真が飾られている。
母は、「好きな服とか、自分のために使いなさいと言うのに、聞かないの。
結婚費用にでも充てようかしら」。

社会主義国独特の選手育成システムは、
才能ある子供とその親にとって貧しさから、はい上がる手段。
幼い程菲が、「体操をやめたい」と言い出した時、
父は厳しくしかって思いとどまらせた。

広州市の「広東省体操後進人材基地」。
暗い練習場の片隅で、レオタード姿の林思揺ちゃん(8)が泣いていた。
昨年から、300キロ以上離れた汕頭から寄宿舎に入っているが、
半年ぶりに見学に訪れた祖父母の顔を見るなり、ホームシックに。

全国屈指の「体操どころ」である広東省で、
13か所の「基地」に入るだけでも並大抵ではない。
コーチ陣は、「レッスン」の名目で地方の小学校を回り、
身体能力や反応力に優れ、足や腕がピンと伸びた、
体操向きの子をスカウト。

子供たちは、まだ親が恋しい年ごろ。
張稼強コーチ(48)は、「ホームシックになる子は、本当に多いんだ」
とため息をついたが、
「将来は世界、五輪チャンピオン」と期待する祖父は心を鬼にして、
「おうちに帰りたい」と涙を流す孫を説き伏せた。
「林家の栄光のために、頑張りなさい」

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080709.htm

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