2008年7月20日日曜日

転倒予防医学研究会 「健脚度」介護重症化、死亡の予測ツールに

(じほう 2008年7月14日)

転倒予防医学研究会らは、高齢者の移動能力評価法
「健脚度」測定の有効性に関する報告書をまとめた。
健脚度を測定した高齢者を、7年間追跡調査したところ、
健脚度のレベルが、その後の要介護状態、介護の重症化、死亡への移行に
影響を与えていることが分かった。

健脚度の3段階評価で「低い」と判定された高齢者は、
普通と判定された高齢者に比べ、5年後に要介護状態となる危険性が2.50倍、
要介護2以上でも2.26倍。

調査報告書は、「運動器の10年日本委員会」が進める
健康寿命の延伸に関わる調査研究事業の一環。
研究題目は、「要介護状態への移行を予測するスクリーニング、
及び運動器の重要性を啓発する手法としての高齢者移動能力評価法
『健脚度測定』の有効性に関する研究」。

◆健脚度総合得点は3段階で解析

調査対象となったのは、2000年に長野県北御牧村(現東御市)在住の
65歳以上の高齢者で、健脚度測定の参加者786人のうち、
移動能力測定値が欠損していた高齢者を除く630人。

健脚度測定は、<1>10m全力歩行、<2>最大1歩幅、<3>40cm踏み台昇降、
<4>つぎ足歩行の4項目、それぞれの項目を3段階で評価。
評価の良い順に2点、1点、0点に点数化、4項目の合計点数を
健脚度総合得点(8-0点)とした。
総合得点は「高い」(8-6点)、「普通」(5-3点)、「低い」(2-0点)の
3つのカテゴリーに分けて解析。
エンドポイントには、「要介護状態」、「要介護2以上」、「死亡」を設定、
観察期間は00年4月から07年10月まで。

◆健脚度低い高齢者は、要介護状態2.50倍、要介護2以上2.26倍

コックスの比例ハザードモデルとKaplan-Meier法による解析結果をみると、
健脚度総合評価の3段階では、すべての転帰で有意な関連性が認められた。
健脚度の総合点数が低ければ要介護状態、要介護2以上、死亡といった
3つのエンドポイントの危険度が高まり、逆に高ければ危険度は低くなる結果。

健脚度が「低い」と判定された高齢者は、「普通」と判定された高齢者に比べ、
要介護状態となる危険性が2.50倍、要介護2以上は2.26倍、死亡1.88倍。
総合評価で健脚度が「高い」と判定された高齢者では、普通に対して、
要介護状態で0.47倍、要介護2以上は0.39倍、死亡0.65倍と危険性が低くなる。

健脚度総合評価の3分類の累積生存率では、
すべての転帰で評価段階ごとの差が確認。
5年後に「要介護状態」にならない確率(5年生存率)は、
総合評価が「高い」91%、「普通」82%、「低い」60%。
低いと判定された高齢者では、7年後に39%まで減少。

健脚度が低いと判定された65歳以上の高齢者10人のうち4人が、
5年後に要介護状態、7年後には6人以上が要介護状態となる計算。
要介護2以上にならない率(5年生存率)は、「高い」96%、「普通」91%、「低い」81%。
死亡しない率(5年生存率)は、「高い」93%、「普通」89%、「低い」81%。

毎年実施する健脚度測定に継続的に参加した群と参加していない群に
分けての解析も行った。
結果、継続して参加することと有意な関連がみられたのは、女性の歩幅のみ。
「この違いは顕著で、継続的に参加している高齢者の歩幅は
ほとんど低下していなかった」。
年1回の限られた時間での情報提供のみで、7年後も変化がなかったとして
「健脚度測定を活用した働きかけの有効性を示す結果といえる」。

◆「老化は脚からを示すエビデンスに」

研究代表者を務める岡田真平氏(身体教育医学研究所)は、
今回の成果について、「健脚度の総合評価が低ければ低いほど、
要介護状態、要介護2以上、死亡の発生率が高まる。
今後、健脚度測定を活用した介護予防の取り組みを進める上で
有益なデータとなりうる。
『老化は脚から』が具体的なエビデンスとして示された」。

継続的に健脚度測定に参加することで、
「移動能力の低下を抑えることができる」。
健脚度測定が運動器の重要性を啓発し、
「結果として、介護予防に資する指導手法として有効である可能性を示した」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77264

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