2010年9月21日火曜日

学習塾は今(6)親身・綿密 小規模の良さ

(読売 9月11日)

中学進学塾「啓進塾」の金沢文庫校をのぞくと、
小学6年の男子塾生たちが国語の問題と格闘。
「麻布や栄光では、必ず出る記述式問題。さあ、しっかり解けよ」。
講師で教務部長の高林範明さん(41)が、厳しい表情で活を入れる。

解説の時間になると、緊迫した雰囲気は一転。
高林さんは、塾生を下の名前やニックネームで呼び、
時にジョークを交えながら、問題を正確に解くコツを指導。
塾生からは、次々に質問が投げかけられていた。

啓進塾は、横浜市内に2教室だけの比較的小規模な塾だが、
栄光学園を始めとする地元神奈川の難関校だけでなく、
東京の私立の名門・麻布中学への合格実績でも知られている。
曽根嘉浩塾長(55)は、「塾生一人ひとりの性格や可能性を
講師が見極め、情熱を持ってとことん付き合う『職人型塾』。
大手塾とは違い、講師と塾生の距離がとても近い」と、
面倒見の良さを強調。

使われる教材は、ほとんどがプリント形式で、講師が毎年、
塾生の学力などに応じて作り替える。
問題作りから採点まで、すべて手作業。
授業時間外の指導は日常的に行われ、学力面だけでなく、
精神面のケアも重視する。
取材中も、授業の合間や終了後に、講師と塾生が
1対1で向き合う姿がよく見られた。

学習塾の講師は、一般的に学生アルバイトも含め、
非正社員が占める比率が高いケースが少なくないが、
同塾の講師は、全員が正社員。
塾の指導理念に沿って、講師を育てていることも特徴。

その理念とは、受験勉強を通して子どもたちの思考力や
感受性を磨き、豊かな人間性を育むこと。
これは、麻布中の教育方針と共通する点もあることから、
おのずと麻布合格に向けた指導にも力が入る。

小学4年から同塾に通う横浜市の小学6年男子(11)は、
「受験勉強にくじけそうになった時、先生が自分の経験を交えながら、
やる気を引き出してくれた。
学力も伸びたし、精神的にも強くなったように思う」

同塾の様々なこだわりは、公教育への疑問が出発点。
学校は、『教育の平等』のもとに、他人との差に気づく機会を
奪っている。
受験をきっかけに競い合うことで、子どもたちは自分を発見し、
自己を鍛える目標を見つけることができる」と曽根塾長。

◆メモ

全国学習塾協会が05年、全国の学習塾を対象に実施した調査によると、
講師に占める非正社員の比率は平均56.9%。
非正社員の内訳は、大学生が42.9%と最も多く、
主婦(15.9%)、その他兼業者(10.3%)の順。
講師の確保が難しい理由は、「勤務時間帯が遅い」、
「勤務時間が変則的」、「賃金水準が低い」などが上位。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100911-OYT8T00178.htm

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