2010年9月25日土曜日

学習院の夏合宿(1)砂漠化の怖さ 植林で体感

(読売 9月17日)

照りつける太陽の下、靴がもぐる砂にスコップを突き刺して穴を掘る。
バケツリレーで水を注いでも、数十秒後に姿を消す水たまり。

「すぐ蒸発するので、水を注いだら、わらで周りを囲って」
民間団体「内モンゴル沙漠化防止植林の会」代表の
ボリジギン・セルゲレンさん(38)の指示に、
学生らが噴き出す汗をぬぐいつつ、耳を傾ける。

8月、学習院が中国・内モンゴル自治区で約2週間、
合宿「学習院グリーン元気プロジェクト」を行った。
その手始めが、砂漠化が進む同自治区東部、
「ホルチン沙地」での植林ボランティア。

参加した高校生2人、大学生17人、大学院生3人らの一行は、
首都・北京から空路約1時間の通遼市へ、
さらに車で2時間以上かけ、この地へやってきた。

「砂漠化で、私の村のコミュニティーは壊れた」と話す
セルゲレンさんは、同地の出身。
狩猟と放牧が生業の草原地帯で、暮らしていた。
移民急増による過剰な農地開墾などで、特に1990年代、
砂漠化が急速に進行し、家族で移転を余儀なくされた。

1年で60cmの砂が積もり、家が埋まり、湖が消滅する惨状。
2000年、植林に取り組み始めたセルゲレンさんは、
「現状を知って」と、かつての留学先で、
今は客員研究員を務める学習院に協力を求めた。

一行は、3日間、モンゴル族の現地住民や、通遼市にある
内蒙古民族大学の学生らと一緒に作業。
苗が風で飛ばされないよう、トウモロコシのわらを2m四方に植えた
「草方格」約170個を設置し、そこに乾燥地帯でも生息する
グミ科の木・サジーの苗を4本ずつ植えていく。
別の場所には、マツの苗約260本を植林。

途中で体調を崩しつつも、参加し終えた大学4年関佑子さん(22)は、
「何もなかった場所に、大勢で力を合わせてこんなにできた」
大学3年の菊池優規さん(21)は、厳しい自然の中で
無事に育つかどうかはわからないという現実に、
「こんな重労働をしても、成果が出るとは限らないとは、
地味な取り組み。遠くからの資金援助だけではわからない」

「野外学習などを通じて体力、社会性を養ってほしい」と始まった
学習院グリーン元気プロジェクトは、一昨年のロシア・サハリン、
昨年の小笠原諸島に続いて、今年が3回目。
内モンゴルで、学生たちは何をつかみ、どう成長したかを、
3回にわたって紹介する。

◆草方格

砂の移動を抑え、草や木の苗の定着を促す緑化技術の一つ。
砂地にわらなどを差し込んだ柵で囲い、中に苗を植える。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100917-OYT8T00232.htm

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