2009年12月11日金曜日

特別支援教育(3)教師の卵 心もサポート

(読売 12月3日)

教員志望の大学生を、学習支援ボランティアとして活用する高校。

「質問をしても、答えが見つかるまで話さない。
長い沈黙に特徴がある子だな、と戸惑いも」
京都教育大学大学院で教職を目指す修士課程2年の
池田純さん(23)は、高杉大輔君(仮名)(20)との出会いを振り返る。

池田さんが、京都府立朱雀高校の高大連携事業の一環として、
同校の学習サポートアシスタントになったのは2007年夏。
放課後に個別指導したのが、当時3年生の高杉君。

高杉君は、考えを頭の中で整理するのが苦手で、
言葉にするまでに時間がかかる。
答えにたどり着かないと、途中経過を話さないので、
どこでつまずいたのか分からない。
市販の問題集は役に立たないと思い、
小さな問いを積み重ねる形式の教材を自作。

粘り強く話しかけた結果、高杉君の沈黙は次第になくなった。
「高杉君は明るくなったねと、養護教諭から声をかけられたのが
うれしかった。授業のポイントを学べ、貴重な体験だった」と池田さん。
高杉君は、「頼れるお兄さんって感じで、気軽に話せた。
勉強も一対一で分かりやすかった」

全日制、定時制、通信制を併設する同校が、
特別支援の取り組みを始めたのは10年前。
学習障害(LD)と疑われる生徒が入学してきたのがきっかけ。
専門家を講師に招いて研修を重ね、
発達障害への理解を深めていった。

「教員がスキルアップした結果、人間関係を築くのが苦手な子など、
それまでは見過ごしていた『気になる子』に気づくように。
なぜできないのかと怒るのではなく、
どうすればできるようになるだろうと、
生徒への意識も大きく変わった」と、滋野哲秀校長(55)。

学習サポートアシスタントは元々、進路指導のために導入。
地方自治体の財政難で、特別支援教育支援員が削減方向だが、
特別支援教育にも応用できると同校は考えた。

「学習面でのつまずきをフォローするだけでなく、
身近な存在としてメンタルな部分でも寄り添ってもらっている」と
進路指導部の高田法彦教諭(48)。

年間30日以上欠席した生徒を対象に、06年度から導入した
長期欠席者特別入学者選抜も、特別支援教育を深化させる契機。
「気になる子」の情報を共有し、複数の目を注ぎながらも、
決して特別扱いはしない。
それが、普通科の中でのあるべき特別支援教育と考えている。

入試というハードルを越えた以上、特別扱いは自尊心を傷つけ、
障害のレッテル張りにも。
大切なのは、その子を含めて誰にでも分かる授業をすること」と
元養護教諭で、現在は非常勤講師の佐藤友子さん(62)。

そんな実践を、同校は「特別でない特別支援教育」と呼ぶ。

◆特別支援教育支援員

障害のある生徒に対して、介助を行ったり、学習活動上の
サポートを行ったりする。
公立幼稚園、小・中学校では国の地方財政措置があるが、
高校では各自治体の自主財源に頼るしかなく、
財政事情の悪化から、その数は減少。
公立高校の活用状況は、2007年度278人、08年度224人、
今年度219人。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091203-OYT8T00278.htm

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