2009年12月10日木曜日

特別支援教育(2)心理学で学ぶ対人関係

(読売 12月2日)

対人関係を上手に築けるよう、心理学を必修で学ぶ高校。

「怒り、落ち込み、不安はどこからくるんだろう?」
教壇から問いかける女性教諭に、生徒の視線が注がれた。

開かれた教科書には、「思考楽々シート」の文字。
「問題の出来事」、「そのときの心のつぶやき」、「感情」、
「楽になるための考え」が、順を追って記入。

「ケータイの待ち受けを見たら、自分のじゃなかった。
だれが私のを持ってるの?ゲキ不安!
さっさと見つけようと行動に移す!!」。
女子生徒が、笑顔で自分の「答え」を発表。

「怒り、落ち込み、不安になったら、心のつぶやきに耳を傾け、
柔らかく考えてみて」
教諭はそう言って、45分間の授業を締めくくった。

茨城県鹿嶋市の県立鹿島灘高校は午前、午後、夜間の
3部制を取る定時制。
不登校など多様な生徒を受け入れ、「フレックススクール」。
小中学校時代の友人関係のトラブルから、
心に問題を抱える子もいる。

発達障害のある子の3割が不登校になり、
不登校の3割に発達障害があると言われる。
同校には、発達障害の診断を持つ子はいないが、
疑いのある子を含め、集団生活で苦戦しやすい子を支援するため、
学校設定科目として「心理学」を設定。1年次に必修。

元々の障害を「一次障害」というのに対し、
周囲の無理解などによって失敗体験が重なり、
自尊心が低下して起きる様々な症状を「二次的障害」。
「高校生の年代に表れる症状は、両方が複雑に絡み合い、
どこまでが発達障害によるものとは言いづらい。
発達障害を見つけて選別するよりも、学校生活で苦戦する
生徒たちとして指導する方が有効」
筑波大学の石隈利紀教授(59)(学校心理学)。

授業は、ロールプレイング(役割演技)などのゲーム的要素も
取り入れ、楽しみながら社会スキルなどを学べるように構成。
「相手と自分の気持ちが、よく分かるようになった。
社会に出てからも、きっと役立つはず」と男子生徒(16)。
「自分は、なんてマイナス思考なんだろうと気づき、
つらくなるときもある」と、表情を曇らせる女子生徒(15)も。

「自分の内面と向き合う授業だから、心にふたをして
閉ざしてきたつらい出来事をほじくり出されると感じるときも。
心の傷を少しずついやしてほしい」
授業を担当する鴨志田和子教諭(51)。

今年度の中退者数は、2007年度の約1割で推移。
自己を発見し、理解する授業が、実を結びつつある。

ほかの人と同じようにできない自分を責めるのではなく、
ありのままの自分を受け入れ、自尊感情を取り戻せるように
背中を押す。
そこから、本当の特別支援教育が始まる。

◆学校設定科目

学習指導要領により、各学校が地域、学校、生徒の実態、
学科の特色等に応じ、独自に設けることが認められた科目。
文部科学省の私的諮問機関がまとめた報告書では、
発達障害のある生徒の自立にも資する教科・科目を開設し、
通級指導教室のような形態で実施することも考えられる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091202-OYT8T00251.htm

0 件のコメント: