2009年12月6日日曜日

ネットに潜む20代消費の鉱脈

(日経 2009-11-28)

消費市場で、20代は「沈黙の世代」というレッテルをはられ、
期待感は薄い。
20代の消費行動を追うと、消費の構造変化につながるような
異状が見えてくる。

消費不振は、深刻さを増している。
クレジットカードのショッピング取扱高は、2009年5月以降、
5カ月連続で前年同月の実績を下回った。
決済市場では、一貫してキャッシュレス比率が高まり、
マイナスが続くのはかつてなかった。

不振が目立つのは、百貨店・スーパー。
景況の影響が増幅して出やすい飲食店の落ち込みが顕著。
「その他」とひとくくりにされている利用の中に、
成長分野が隠れている。

「通信販売」と「公共料金」。
この2項目の取扱高を支えているのが、20~30代男女。
クレジットカード業界は最近、この変化に着目。

公共料金は、クレジットカードで決済する習慣が
若い世代に普及したという背景。
携帯電話の利用料の支払いを、コンビニエンスストアや
携帯電話ショップからクレジットカードに切り替えるだけで、
1人当たり10万円以上、取扱高を底上げ。

通信販売は、消費の構造変化の一端につながっている。
20代向け限定のカード発行を始めたJCBによると、
インターネット通販で若年層が他の世代に比べ、
突出して多く利用するのは、ファッション関連と音楽関連。

新カード発行のため、数年かけて20代の消費行動を分析した
同社によると、20代は「興味がある分野にだけは、
案外、カネをつぎ込む」。

アンケート結果とカード利用の場所などを合わせて分析すると、
「店で見て、ネットで買う」という行動がファッション分野で定着。
若者に人気のファッションブランドでは、
ショールームのような店を1、2店構えて、
売り上げ構成は「ZOZOタウン」などネット上のファッションモールに
出した店に依存する、という売り方。

20代は、リアル店舗ではあまり買い物をしないし、
ブランドの知名度にはこだわらない。
「支出意欲が乏しい」というのは誤解かもしれない。
10万円を超える靴や5万円を超える服であっても、
気に入れば買っている。
買いたくて我慢しているものもたくさんある。

消費意識の機微は、主要統計からは漏れがち。
彼らの消費意識を分かりにくくしている要因として、
必ずしも新品にこだわらないこと。
ネット上では、ショップの商品もオークションへの出品も、
それほど分け隔てなく見比べる。

デザインや値段に比べ、新品か中古品かはたいした要素ではない。
リアルの世界でも、「ハンジロー」などの古着専門店が
意外なほど若い男女の関心を呼んでいる。

正社員の若者でさえ、雇用不安を口にする環境だけに、
20代に消費の爆発力があるわけではない。
好奇心や価値観をそれなりに持っていて、消費もしている。
実像が見えにくいのは、供給側が提供し得ていない領域で、
彼らが消費行動をしているせい。

ネット上にみられる多品種少量流通と中古品流通。
この領域を「ゲリラ戦」と見下していたら、
貴重な消費鉱脈を見逃してしまいかねない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo091127.html

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