(読売 12月5日)
入試という大きな壁を超え、中学から高校へ支援を引き継ぐ。
福島県立川俣高校で、特別支援コーディネーターを務める
高井麗子教諭(53)にとって、3月末の数日間は、
1年で最も多忙を極める時期。
今年は、入試の最終的な合格発表が3月25日、
27日がオリエンテーション。
高井教諭は25、26日の2日間で、
入学する生徒の出身校を駆け回った。
「担任が新年度に異動することもあるから、
3月いっぱいが勝負」と高井教諭。
発達障害のある生徒など、配慮の必要な子に関する情報を
できるだけ収集し、新学期からの授業に備えるのが目的。
「授業のペースについていけず、生徒がパニックになって
しまったこともあった。
事前に中学から情報を得ていれば、防げたのに……」。
高井教諭が苦い表情で振り返る。
発達障害のある生徒が充実した高校生活を送るには、
個別の指導計画など、中学での支援情報を円滑に
高校に引き継ぐ必要。
入試で不利になることを懸念、情報を伝えない中学も少なくない。
公立の場合、市町村立の中学と、都道府県立の高校とでは、
学校設置者が異なることもネック。
同校は2005年、発達障害のある生徒の高校での
指導のあり方など、高校では初の研究開発学校として、
文部科学省から指定を受けた。
幼稚園、小、中学校のコーディネーターが集まる連絡会に
高井教諭も参加、幼児期からの一貫した支援体制の整備に
力を注いでいる。
「英語の単語を区切らずに書く生徒のノートに、
教員が単語ごとに蛍光ペンを引いて色分けするなど、
発達障害の子にも分かる丁寧な指導を、
すべての生徒に対して心がけてきた。
その結果、学校全体としての学力も向上した」。
高井教諭は、特別支援教育に取り組んだ成果。
滋賀県立日野高校は、高校卒業後の支援にも力を注ぐ。
本人と保護者の了解を得た上で、
高校での支援に関する情報を、大学や企業に提供。
特別支援教育コーディネーターの山口比呂美教諭(51)は、
「年に3~4回、大学での様子を担当者に尋ね、
本人にも電話を入れる。
本人が困っている場合は、こちらから大学に連絡することも」
発達障害のある子が自立するには、
「保幼小中高大企(保育園、幼稚園、小、中学校、高校、大学、企業)」
が連携し、早期発見と生涯にわたる支援が欠かせない。
同校が取り組むのは、障害理解教育。
発達障害への偏見をなくし、正しく理解してもらうため、
生徒への啓発や、保護者、地域の人々、企業にも公開した
研修会を重ねている。
「障害をその人の個性や特性と受けとめ、
お互いを認め合えるようになってほしい」と山口教諭。
教諭たちが思い描くのは、「発達障害」や「特別支援教育」という
言葉を、もはや必要としない社会。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091205-OYT8T00378.htm
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