(読売 8月15日)
博物館を拠点に研究を進める市民が、地域と館をつなぐ存在。
「この骨は、今年4月に亡くなったうちのネコ。
こっちは、3年前の忘年会で鍋で食べたトリの骨」
滋賀県立琵琶湖博物館。
企画展「骨の記憶」で、大津市の学習塾講師永野麻也子さん(52)が、
自ら作った骨の標本を説明。
人間や動物の骨約200点を展示したこの企画展では、
会場の約3分の1が、同館と連携する市民グループの一つ、
「ほねほねくらぶ」のスペース。
メンバーが同館の支援を受けながら、作った骨の標本や剥製などが
展示、メンバーは求めに応じて解説を行うことも。
ほねほねくらぶ会長の会社員山中裕子さん(45)は、
「博物館に、『トリの剥製を作りたい』と言えば、材料を用意、
わからないことがあれば質問できる。素人研究家にはありがたい」
同館と連携する市民の登録制度は、2000年に制度化。
博物館との橋渡し役になってほしいという願いを込め、
縁を取り持つ人といった意味を持つ「はしかけさん」と名付け。
現在は、「近江昔くらし倶楽部」、「田んぼの生き物調査グループ」、
「里山の会」など15グループ354人が活動中。
博物館の理念や利用ルールなどを同館の講座で学べば、
はしかけさんとして登録、グループ単位で様々な研究に取り組める。
日常的に学芸員に相談でき、適当な学芸員がいない場合は、
他の博物館の専門家を紹介。
自分たちでイベントなどの企画や運営もできる。
山川千代美専門学芸員(45)は、「学芸員だけではカバーしきれない
館外での活動も含め、地域の人たちに、琵琶湖の自然や暮らしとの
かかわりを見つめ直すきっかけを作ってもらえれば」
02年に発足したほねほねくらぶは、小中学生を含む28人が
月に1、2回集まり、博物館での学術資料には使えない
動物の死体などを譲り受け、皮をはぎ、解剖し、標本にする作業。
今回は初の本格展示。
はしかけさんグループの中でも、一番古株の「うおの会」(村上靖昭会長)は、
魚とその生息環境を定期的に調査。
04年、地域に呼びかけ、「琵琶湖お魚ネットワーク」を結成する原動力。
同ネットが05~07年、1万以上の地点で行った
琵琶湖水系魚類調査の結果は、7月から同館で公開。
高橋啓一・同館総括学芸員(52)は、
「ここでは、むしろ私たち学芸員がボランティア。
はしかけさんが、どんどん博物館を“卒業”し、研究分野を深め、
地域に広げていってほしい」と期待。
地域とつながることで、博物館自身がよりよい学びの場として成長。
◆琵琶湖博物館
琵琶湖をテーマに、その成り立ち、人間とのかかわりを表す
資料や模型、周辺に生息する淡水魚などを展示。
触れて体感できるハンズオン形式の展示物も多い。
企画展「骨の記憶」は、11月23日まで。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090815-OYT8T00271.htm
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