(読売 8月11日)
ユニークな実験メニューを考え、人気を集めている科学館がある。
「せーの、吸ってー、吐いてー!」
垂直に立てられた透明な筒の底に、
16ポンド(約7・2キロ)のボウリング球。
上部から延びた8本のチューブで、
子どもが力いっぱい空気を吸うと、球がグーンと浮き上がった。
「エーッ」、「うそみたい!」子どもたちは目を丸くする。
球の上下の気圧差を利用した教具。
球が最上部に達すると、全員が「すごーい」と拍手に沸いた。
京都市の市青少年科学センター。
市立大藪小学校6年生が、「見えない空気の不思議な力」の
実験授業に訪れた。
山田海斗君(11)は、「もっとほかの授業も受けたい」と目を輝かせた。
「うちの自慢は、オリジナルの教材・教具なんです」、
同センターの八木陸郎・首席指導主事(59)。
中学校の理科教諭や元教諭らによる講師陣が知恵を絞り、
開館後40年間で約320種類の実験メニューを考えてきた。
同市立小中学校254校の小学6年と中学1年は年1回、
必ず同センターで授業を受ける仕組みに。
同小の河原雅春教諭(37)は、
「子どもを引きつける授業展開は、我々にも勉強になる」
同センターでは、小学校教員などを対象に、
実験指導の研修を行っている。
子どもの理科離れが進んでいるとも言われるが、
理科が苦手な教員も少なくない。
小学校教員の養成課程は、基本的に文系で、理科の楽しさを
子どもに伝えられるほど深く理解するのは容易ではない。
科学の不思議に魅了される子どもは、決して少なくない。
岐阜県瑞浪市のサイエンスワールド
(同県先端科学技術体験センター)は、大型連休には1日3000人、
年間9万人が訪れる人気施設。
常設展示物が、ほとんどないのが特徴。
小中学生・高校生の授業や、親子、主婦向けの科学工作など、
約200種類の実験メニューを用意。
ほぼ毎週、実施内容を入れ替えるため、
いつ行っても新しいテーマが学べる。
同施設のモットーは、「意外性」
バナナがクギを打てるほど凍る液体窒素に手を入れさせるなど、
危険を伴う実験も、理科教諭歴20年前後のベテラン職員の下で行う。
小中学校の授業でも、
〈1〉子どもに、「先生」と呼ばせず「おじさん」と呼ばせる
〈2〉なるべく教えず自分で考えさせる
〈3〉頭の良しあしで評価しない――など、
自由な雰囲気も子どもたちの心を開放的に。
「英語の『ワンダフル』は、『不思議と驚きでいっぱい』の意味。
感性の土台に積み上げられた知識こそ、生きた知識になる」と
日比野安平館長(61)。
いつの日か、ここからノーベル賞学者が生まれる日を夢見ている。
◆京都市青少年科学センター
親子など2人1組で実験・工作を行う「楽しい実験室」を開催。
望遠鏡作りなど26テーマ。
◆岐阜県のサイエンスワールド
夏休みの科学研究相談を行っている。
テーマ選択や実験方法などを助言。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090811-OYT8T00320.htm
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