(2009年8月19日 WebMD)
69歳の女性は、1日に6時間以上睡眠をとったことはなく
昼寝もしないが、健康であり大抵の人々よりもはるかに活動的。
44歳の娘も、休暇中でも午後10時に就寝し、午前4時に起床。
二人には、DEC2という稀な遺伝子変異があった。
この変異のある人々は、必要な睡眠時間が少ない。
遺伝子とヒトの睡眠行動との関連が示されたのは、これが最初。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のYing-Hui Fuら。
「最も興味深いことは、この遺伝子変異がヒトの行動特性に
つながるということ。
遺伝子組成が、我々の行動に影響することは明らか。
睡眠の必要性の制御に、何が関与しているのか?
これは、この探究を始める道を開く」
ローザンヌ大学の遺伝学者、睡眠研究者であるMehdi Taftiは、
「睡眠を、決定的および劇的にコントロールする遺伝子が
ヒトで見つかったのはこれが初めて。
遺伝子変異が、睡眠の量を劇的に変化させることが
可能だというエビデンスを手に入れた」
多くの人々は、ベッドに入ってからわずか6時間後には
起きるように目覚まし時計をセット。
体調を維持するため、日中に「仮眠(power nap)」をとっていると、
Kathryn Severyns Dement睡眠障害センター(ワシントン州)の
Richard Simon Jr.は、
「一晩に6時間しか睡眠をとらない人々の大部分は、
最後には疲れ切ってしまう。
6時間しか睡眠を必要としない人々は少数派」
DEC2変異の影響が発見されたことは重要な知見、
複雑な睡眠過程の一部にしか影響しない。
「DEC2は、おそらく極めて稀な変異。
60家系のうち、1家系にしか見出されなかった。
この変異では、短時間睡眠者の1%程度しか説明できず、
全容の解明にはほど遠い」
遺伝子が睡眠の必要性に影響することを証明するため、
Fu博士らは遺伝子組み換えによって、
ヒトのDEC2遺伝子を有するマウスを作製。
そのマウスは、睡眠時間がより短く、起きている時間がより長かった。
マウスから睡眠を剥奪したとき、変異マウスは
休息をとることが許されたときに回復するのに要した
睡眠時間がより短かった。
「これらのマウスは、それほど多くの睡眠を必要としない」
それはなぜか?
Fu博士は、変異遺伝子が、マウス、人間が睡眠の必要性を
乗り越えるのを何らかの形で手助けし、
健康を維持するのに足る長さの睡眠をとることを可能にする。
DEC2変異と、全く同じ作用をする薬剤が開発されたとしたら、
何が起きるだろうか?
「DEC2と同様の効果を示す薬剤があったとしたら、
それはかなり安全である可能性がある。
そのヒトは、その変異があっても無事だからである」
Tafti博士は、DEC2に似た薬剤を開発しようと試みる前に、
今後の研究で睡眠の必要性に影響する、
より多くの蛋白質が同定されるだろう。
「その結果、この経路に影響を与えて、
睡眠を増やしたり減らしたりすること、睡眠をより深いものにすること、
睡眠剥奪からの回復をより良好にすることが可能に」
Fu博士の研究、Tafti博士と同僚のHyun Horによる論説は
『Science』8月14日号に掲載。
http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/8/19/105960/
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