2009年8月28日金曜日

NIE20年(2)社会学べる「職業探し」

(読売 8月19日)

中学校では、新聞を使った職業探しや投稿で、
生徒の社会への関心を高める。

テレビでおなじみの北村晴男弁護士や、宇宙飛行士の毛利衛さんの
新聞記事がスクラップ帳に。
さいたま市立岸中学校で、「職業探し」をテーマに、
1年生の総合学習の授業。

「プロ野球選手」、「国会議員」、「作家」――。
生徒はスポーツや政治、人物紹介の記事を切り抜き、
横にその職業や感想を書き込む。
ピアノを習う松本祐介君(12)は、今年6月に
国際的なピアノコンクールで優勝した辻井伸行さん(20)の
記事を張り、「(辻井さんは)人の支えで優勝できた。
人を支えてあげられるような人になりたい」と夢を書き添えた。

同校では、3年間を通して新聞を活用、
1年生ではまず新聞に親しむ。
「職業探し」を進めるのは、たいていの記事に職業が含まれ、
見つけやすいからだ。
年間で、10個の職業を探すことを目標。

「様々な職業を意識していくうちに、向いている
職業に気付くこともある」と所孝子教諭(52)。
スポーツなら人気の「サッカー選手」に目が行きがち。
それを支える裏方やコーチなど、世の中には色々な職業があり、
自分の適性もある。

2年生では、投書欄などを活用し、社会には様々な意見が
あることを学んだり、ディベートをしたりする。
3年生では、興味のある記事をスクラップし、
最後に原稿用紙5枚程度の「卒業論文」にまとめている。
所教諭は、「自分がどんなことに興味があるのかを意識しながら、
高校や大学に進んでほしい」

生徒の自由な意見や川柳を新聞に投稿する――。
高松市立高松第一中学校の前野勝彦教諭(43)は、
2000年からそんな取り組みを続け、約3000点を投稿、
約1000点が掲載。

始めたのは、生徒の表現力や書く力に物足りなさを感じたため。
投稿で進学成績が上がった高校の話を知り、
中学でもできると考えた。

「素直な気持ちを書く」、「うそは書かない」、「個人を中傷しない」、
「原則匿名は受け付けない」の4点がルール。
内容は、部活や友人の話のほか、環境問題やいじめについての
意見を書く生徒も。
そうした問題に関心のなかった生徒も、身近な友人の投書に
刺激を受け、問題を考えるきっかけに。

掲載されると書く意欲につながるし、教師にとっては
指導の手がかりになる。
約5年前、一人の生徒が自ら投書を持ってきた。
義兄の事故死を受け止め、精いっぱい生きていくという内容。
課題を抱える生徒だったが、成績やイメージでは分からない
一面を知ることができた。

今年度も、道徳の時間などで新聞投稿を進めている。
「純粋に喜怒哀楽を感じたり、社会に目を向ける生徒になってほしい」
前野教諭はそう願っている。

◆読解力向上に効果も

京都教育大付属桃山中学校の神崎友子教諭が3年間、
新聞記事を使った授業を行い、計16回の読解力テストを行った。
その結果、1年目の最初には約13%だった無回答の率が、
3年目の最後にはほぼ半減。
全国学力テストでも、読解力に関する記述問題で
正答率が全国平均(約61%)を上回る約93%に上った。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090819-OYT8T00390.htm

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