2009年8月24日月曜日

学びの情報基地(9)博物館 文化の伝承役

(読売 8月12日)

失われつつある伝統文化を、次世代に受け継ごうと取り組む博物館。

北海道平取町の「萱野茂 二風谷アイヌ資料館」。
アイヌの伝統家屋「チセ」が復元された広場に、
地元の小中学生8人が集まってきた。

「イランカラプテ(こんにちは)!」
元気にあいさつした子どもたちは、スケッチブックを広げ、
チセの絵を描き始めた。
北海道アイヌ協会平取支部が開く、「アイヌ語教室子どもの部」

同資料館は、トゥキ(杯)、テクンペ(手袋)など、
伝統の民具にあふれ、アイヌの言葉や文化を学ぶには格好の教室。
講師の関根真紀さん(37)が時折、生徒を連れて来る。

「建物の特徴をよく見て描いてね」と声をかける関根さん。
子どもたちはスケッチしながら、アイヌ語を学んだ。

アイヌ語を取り巻く現状は厳しい。
アイヌ民族は道内に約2万4000人、関東などにも数千人が暮らす。
アイヌ語を授業で教える小中学校はほとんどない。
同協会が14市町で教室を開くが、
子ども・親子向けの教室は平取町と旭川市だけ。

「日常会話ができる人は道内に数人。存続が危ぶまれる言語」
同資料館長の萱野志朗さん(51)は嘆く。

「言葉は、生活や文化の中にあって初めて生きてくる。
子から孫へと伝えられてきた文化の伝承役として、
資料館の役割は大きい」と関根さん。

豊臣秀吉が城を築いた400年以上前から伝わる
滋賀県長浜市の「曳山まつり」。
その花形の「子ども歌舞伎」も、旧市街地の空洞化など、
年々運営が難しくなりつつある。

同市曳山博物館は、子ども歌舞伎教室を始めた。
慣習により、「旧長浜町の男児」に限定されていた後継者の対象を
広げようと、4月のまつりとは別に、11月に公演。
広く参加を呼び掛け、女児を含む小学生10人が参加。

「名作の剣とあらば、武士の尊むところー」、
「はい、そこ大きく。イチ、ニー!」

同博物館で、浴衣姿の児童が、名作「梶原平蔵誉石切」の
けいこに打ち込む。
地元の商店主、川村和彦さん(53)の指導は厳しい。

主役の梶原平三を演じる西島功祐君(11)は、
「歌舞伎の化粧はかっこいいし、見えを切るところが好き」

「子ども歌舞伎により、人情や礼儀作法など、
大切なものを子どもたちに教えることができる」と川村さん。

長崎歴史文化博物館で、小中学生に長崎の歴史や文化に
触れてもらう、「れきぶんこどもクラブ」が始まるなど、
各地で同様の活動が始まっている。

文化の継承に、博物館が中心的な役割を果たしている。

◆萱野茂 二風谷アイヌ資料館
 アイヌ文化伝承に尽力した萱野茂氏が収集・製作した
 民具約1000点を展示。

◆長浜市曳山博物館
 曳山(山車)の実物やまつりの映像が見られる。

◆長崎歴史文化博物館
 「れきぶんこどもクラブ」は長崎県内の小中学生対象。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090812-OYT8T00282.htm

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