2009年3月9日月曜日

家庭の省エネ、ファンケルの教訓

(日経 2009-03-02)

2月2日付「『個の環境感度』が試される」で、ファンケルが
家庭で電気やガスの使用量を大幅に削減した社員に報奨金を出す
制度を導入したことについて触れた。
「エコチャレンジ」第1弾(実施期間、昨年7—11月)の最終集計がまとまり、
削減目標の達成者を集めた表彰式が同社で開かれた。

社員2000人(派遣含め、従業員数約3600人)のうち、
電気で削減目標を達成したのは33人、ガスは34人。
達成者数は、参加者の1.7%にとどまった。

制度の概要は、昨年6月の使用料金を同月の全国平均(家計調査の数値)
で割った値が基準。
基準値が1以下なら、7—11月の5カ月平均で10%以上の削減が目標。
基準値が1を上回っていたら20%以上。
基準値が1.13の人は、5カ月の使用料金の合計を同期間の全国平均の合計で
割った値が0.90(1.13×0.8=0.904)以下になれば目標達成。

日本全体の家庭からのCO2排出量は、2007年度に1990年度より41%増。
06年度比でも8%増。
パソコン、エアコンなど製品個々の省エネは進んでいるが、
家にある電化製品自体の数が増えている。

尺度が使用料金という違いはあるにせよ、
ファンケルの10%削減や20%削減という目標設定は、文字通り挑戦的。
それが超難関になった原因の1つで、12月から始めたエコチャレンジ第2弾
(3月まで4カ月間)では、参加者全員の削減目標を
「わずかでも基準値を下回ればいい」という線に軌道修正。
第1弾でも、この目標なら4割が到達。

過大な目標設定で、「大山鳴動してねずみ1匹」に終わった——。
第1弾の結果は皮肉な見方もされかねないが、教訓を残している。
難関を突破した目標達成者に、省エネ術を聞いてみよう。

〈早川知佐さん(本社社長室)=電気の削減目標0.89→結果0.52〉

「朝晩のシャワー後、湿気をとるために浴室乾燥機を使っていた。
水滴を軽くぬぐった後、窓を開けておけば乾く。
冬は、エアコンで部屋全体を暖めるのをやめている。
遠赤外線の暖房機にして、自分がいるところだけを暖かくする」

〈香川誠志さん(ファンケル発芽玄米長野工場)=ガス削減目標1.51→結果1.10〉

「朝晩浴びていたシャワーを晩だけにし、使う時間も5分間に。
寒くなってからは、浴びたお湯をペットボトルに受け、
タオルで巻いて湯たんぽ代わりに。
朝に、ボトルの中身を凍った自動車のフロントガラスにかけて溶かす」

成松義文社長は昨夏、週末には家でエアコンを使わない我慢の暮らし。
田多井毅副社長はテレビ、温水洗浄便座など
冷蔵庫以外のコンセントはまめに抜く。
削減目標の高いハードルに跳ね返された。
目標を達成した社員の体験談を耳にして、
「頑張るだけでなく、知恵を出さないといけないと感じた」と成松社長。

エコに無関心だったという早川さんは、
「少しの工夫で(電気代を)減らせると分かって、途中から面白くなった」
実践中の部分暖房は、「西欧のセントラルヒーティング型から、
必要な時に必要なところに必要なだけというコタツ型への転換が課題」
(安井至・国際連合大学名誉副学長)と指摘する環境問題の専門家の発想に
自然体で到達した。

CO2削減を地に足が着いたものにするには、
政府や企業だけでなく、個人の参加が欠かせない。
エコバッグの活用や省エネ家電への買い替えはしても、
ライフスタイルの見直しなど、頭を使うところまで浸透していないのが実情。

「企業の環境への取り組みを、社員1人ひとりの活動の集合体に」(成松社長)。
エコチャレンジ第1弾は、個人レベルで省エネに挑戦させ、
実体験させるきっかけ作りとして一定の成果があった。
企業が、工場やオフィスを越えた広い範囲に温暖化防止を働き掛けることが
できる可能性を持っていることも示唆。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090226.html

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