2011年7月7日木曜日

「8020運動」は幼児期から=山根源之 口福学入門/2

(2011年6月27日 毎日新聞社)

病気になってから診療所や病院に行く、というのが従来の考え方。
病気にかからない努力も、かなり前から進められている。
不老不死は無理としても、アンチエージング(抗加齢)についての
話題には事欠きません。

年をとると視力が低下し、耳が遠くなり、歯が抜け落ちるのは
当然と思われていた。

現在では、歯が抜け落ちることは老化現象から
仲間外れになりつつある。

89年に始まった80歳で20本の歯を残そう、とする
「8020(ハチマルニマル)運動」は、大きな成果を上げている。
達成者は、全国平均(05年度歯科疾患実態調査)では20%を優に超え、
調査年の本年ではかなり高い値が期待。

老年期に近づいてから、口腔に関心を持っても間に合わないことが。
私たちは、病院の母親学級に歯科の立場で積極的に参加。
妊婦に対して、妊娠中の歯と口腔衛生の重要性を説明し、
誕生後の赤ちゃんのための実習も。

一昔前は、妊娠すると歯がだめになり、1人出産するごとに
歯を1本失うといわれた。
現在は、出産数が少ないので目立たないだけなのか?
そうではない。
つわりの時、刺激の強い歯磨剤を使うと、
気持ち悪くなって磨けない人が多く出て、口腔内が不潔になる。
そういう方には、小さな歯ブラシに水だけつけて、
体調の良いときに磨くことをお勧め。

赤ちゃんには歯が生える前から、授乳後に口の周りをふきながら
口の中も指で触り、慣れさせると、乳歯が出た後も歯磨きを嫌がらない。
少し大きくなれば、親の歯磨きを見て、子どもたちが毎食後磨くようになる。

幼児期の親の愛情は、子どもにとって一生の宝。
子どもの口腔衛生状態を気にかけないことは、ネグレクトの一つで、
多数の虫歯や重症の歯肉炎が見られることがあり、
口の中を診ると、児童虐待の有無が想像できる。

親の管理下にある12歳の永久歯の平均虫歯数は、1・4本。
親の思いが子どもの心に残り、多くの人は口腔のケアが習慣になり、
一生を通じて歯を残すことにつながる。

◆やまね・げんゆき=東京歯科大名誉教授

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/27/138520/

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