2011年7月4日月曜日

養護教諭(2)命の授業 被災児童に力

(読売 4月28日)

東日本大震災に襲われた仙台市立木町通小学校。
児童は全員無事だったが、避難所になった同小体育館に
家族と寝泊まりする子もいた。

養護教諭の粉川妙子さん(60)は、避難所の手伝いの合間に、
「夜は眠れているかな」、「体調はどうかな」などと、
優しく子どもたちに声をかけて回った。

粉川さんは10年前から、自ら考案した「命の授業」を行ってきた。
1年生から6年生まで、発達段階に応じて男女の体の違いや
命の誕生、心の働きなどを学ぶ。
授業を始めたきっかけは、14年前にがんと宣告されて
死と向き合った経験と、父親の死を受け入れられずに
保健室登校になった児童との出会い。

人間には、生と死があることを伝え、自分も友だちも大切にする
心を育てたかった」と振り返る。

2月下旬、6年1組の教室で、命の授業は最終回を迎えた。
この日、自身ががんであることを告白。
「乳がんと宣告された時、泣いて落ち込みました。
でも、命ある限り一生懸命生きようと思った。
だから、先生はいつも生き生きしているんだよ」

今村柊君(12)は、「人間は不死身じゃない。命は大切にしたい」
中居美絵さん(12)は、「命は何万年も前から受け継がれていると勉強して、
自分が生まれたことに感動した」と真剣に話した。

養護教諭はかつて、担当教諭などと一緒でないと授業ができなかった。
1998年の法改正で権限が強化され、都道府県に申請して
兼職発令を受ければ、1人で保健の授業ができるようになった。

発令を受けたすべての養護教諭が、単独で授業を行うわけではない。
全学年用の発達段階に応じた指導案を考え、
保健や学級活動などの時間も使って、年間計47時間も保健室から
教室に出向いて指導するのは珍しい。
粉川さんの授業には、他校からも見学者が訪れていた。

粉川さんはこの春、定年を迎えた。
今後は、大学で養護教諭などの育成にあたる。

未曽有の大震災を経験した子どもたちが今後、
向き合い続ける現実はあまりにも大きい。
関一男校長(56)は、「命の授業を受けた子どもたちは、
助かった命を大切に、精いっぱい生きていく力があると信じている」
子どもたちの心のケアのため、
粉川さんが残した命の授業が受け継がれていく。

◆兼職発令

都道府県から発令を受ければ、養護教諭が保健の授業を担当する
教諭も兼務できる制度。
養護教諭の主な役目は、児童生徒の心身の健康や
環境衛生に関する状況把握。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110428-OYT8T00306.htm

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