2011年7月8日金曜日

養護教諭(6)岡山大大学院 高橋香代教授に聞く

(読売 5月5日)

今回の連載では、子どもたちの課題が多様化する中で注目される
全国各地の養護教諭の実践を報告。

教育現場における養護教諭の役割や可能性について、
養護教諭の資質能力の向上について研究している
日本養護教諭養成大学協議会の高橋香代会長
(岡山大学大学院教育学研究科教授)に話を聞いた。

――養護教諭を取り巻く環境をどう見るか?

「以前は、病気やけがの処置が仕事の中心だったが、
悩みや不安を抱えている子どもに対応する割合が大きくなってきた。
アレルギーや感染症、いじめや発達障害など子どもの健康課題が多様化し、
家庭の問題を抱えた子どもは増えている。
理由なく、ふらっと保健室に来る子の数も増え、養護教諭の役割は重要」

――仕事の意味は何か?

養護教諭は、学校保健を推進する中核的な存在。
保健室で個別に対応するので、子どもの体や心の状態に気付きやすい立場。
『おなかが痛い』と訴え、保健室に来た子がいれば、
養護教諭は、病院で診てもらう必要があるかどうかを確認。
食事や睡眠などの様子を聞きながら、生活指導することもあれば、
ふと漏らした友だちや家庭の問題に気付くことも」

「東日本大震災直後、被災地の養護教諭から、
『今は皆、空腹感や寒さから逃れるのに精いっぱいだが、
落ち着いた時に心や体への傷が見えてくる。
傷の深さは計り知れないが、子どもたちをサポートするのが
養護教諭の役目』とメールが来た。
養護教諭はどんな状況でも、子どもたちの保健管理や心のケアに
見通しを持って取り組んでいる

――働く環境はどうか?

「子どもたちの心と体の健康を守り育てるのは、学校教育の基盤。
健康課題が多様化・複雑化し、虐待やいじめ、リストカットなど
命にかかわる場合も。
養護教諭には、専門性の向上が求められるが、研修は十分とはいえない。
自治体は個人の努力任せにせず、もっと全体の底上げを図るべき。
子どもに対応する十分な時間の確保も必要」

――複数配置についてどう考えるか?

「1人配置の場合、子どもの対応に十分な時間を割けないことが多く、
教科担当の教員のように、校内に相談相手もいない。
2人以上配置すれば、子ども一人一人に時間をかけて対応でき、
養護教諭の数だけ、多面的に子どもたちを見ることもできる。
互いに相談し合ったり、学び合うことで、実践力の向上にもつながるので、
全国規模でもっと増員するべきだ」

◇たかはし・かよ

専門は学校保健医科学。岡山大学医学部を卒業。
同大教育学部長などを経て、現在は同大大学院教育学研究科教授。63歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110505-OYT8T00190.htm

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