2011年7月7日木曜日

養護教諭(5)悩みのサイン捉える

(読売 5月4日)

保健室のベランダで、1人の男子生徒が弁当を食べ始めた。
毎日ここで食べているという。

全日制と定時制(3部制)の生徒835人が通う
千葉県立生浜高校の昼休み。
保健室に次々やって来る生徒たちは、体の不調を訴えるわけではないが、
鵜沢京子・養護教諭(46)は、すぐには追い返さない。
「保健室の来室は、生徒のSOSサインの一つ」と考えているから。

不登校気味だった女子生徒が、ふらっと保健室を訪れたことが。
「久しぶりだね」と迎え入れて、会話を交わすうち、
交際相手の家に外泊を続けていることが分かった。
すぐにはとがめず、なぜ自宅に帰らないのかを尋ねると、
最初は言葉を濁していたが、「父親が怖い」と口を開き、
やがて、父親から暴力を受けていたことを打ち明けた。
校長に話し、児童相談所に虐待として通報。

身長を測りに度々訪れていた男子生徒は、
「親が帰って来ない。
たまに冷蔵庫にスーパーの総菜が入っているけど、
何もなくて食べずに寝ることもある」と漏らした。
鵜沢教諭は、「食材を買って、ご飯を作ってみようよ」と元気付け、
簡単なレシピを教えた。

同校のキャッチフレーズは、「やり直しのきく学校」。
中学時代、いじめや不登校を経験した生徒や、
複雑な家庭環境で育った生徒もいるが、
教職員の励ましと本人の頑張りで、有名企業への就職や
大学進学も果たしている。
「その陰に、本校の要ともいえる保健室の存在がある」と
関晶子副校長(54)。

同高の保健室には2010年度、延べ7219人の生徒が来室。
うち半数以上の4145人は、体調不良を訴えず、
「なんとなく来室」した生徒たち。

千葉大学教育学部養護教諭養成課程の岡田加奈子教授(50)は、
「生徒たちが、明確な理由なく保健室に来る状況は全国的に見られる。
家庭事情や友達関係に悩む生徒は少なくなく、
保健室に助けや居場所を求めている」

生徒たちの悩みに気付くのは簡単ではない。
ある生徒は、親が生活費を渡さずに家を空け、
1人で数か月間暮らしていた。
教材費などの支払いが滞り、心配した教員が生徒の自宅を訪ねて
事態が発覚した。
生徒は休まず登校し、まじめな態度で授業に参加。
保健室では、親に食事を作ってもらったことなどを
明るく話していたといい、生徒の真意を見抜けなかった。

子どもたちは、そう簡単には悩みを話さない。
だから、少しの変化にも気づけるようアンテナを張り、
理解して受け止めるよ、というサインも送り続けなければならない」

生徒たちを包み込み、耳を傾ける。
養護教諭の支援は、悩みの発見から始まる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110504-OYT8T00116.htm

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