2011年7月26日火曜日

やる気の秘密(9)応用へ丁寧な基本解説

(読売 5月25日)

「さあ、ここからは教科書に出てないからね」。
大阪府貝塚市立東山小学校で行われた
市川伸一・東京大学教授(57)の特別授業。

この日、初めて「円の直径」を学んだ3年生に、授業の残り15分で
出された課題は、「折れない厚紙の円の中心点を見つけてコマを作る」。

物差しと三角定規を使って直径を何本か書き、
その交点が中心点であることを見つける発展的な問題。
子どもたちは、班ごとに顔を寄せ合って議論に夢中に。
45分の授業でここまで到達するのは、前半で「直径は中心点を通る」などの
基本知識を丁寧に確認したから。

同小は昨年度から、市川教授が提唱する「教えて考えさせる授業」を、
算数を中心に導入。
目標は、「授業のユニバーサルデザイン」(誰にでも優しい設計)。

児童の学力差が大きい公立校共通の悩みが出発点。
先取り学習をしている子もいれば、教科書を読んだだけでは
分からない子もいる。
子どもの理解度に注目し、全員のやりがいを目指す方針に共感。

基本の流れは予習から。
教科書の分からないところに付箋を張り、新しい知識は解説や例題まで
先生が丁寧に教える。
基本知識の使い方を確認してから、発展問題に挑戦。
ここで、子どもたちが「面白い」と思う問題を出せるかが、
先生の腕の見せ所。
子どもたちが教え合う活動も多く入れる。
人に説明することも、理解度のチェックになる。

東山小はこの授業に合わせ、見開き2ページを四つの枠に分けた
独自の「かがやきノート」も作った。
深井利恵子校長(54)は、「授業の見通しが持てる安心感があり、
復習もしやすい」と手応え。

長年、子どもの学習相談を続けてきた市川教授が、
「習得の授業の基本設計」として提案したのは10年前。
詰め込みへの批判から、「教えずに考えさせる」授業に極端に傾いたのに
危機感を覚えていた。
英語で会話テープは聞くが、発音記号や口の形は教えない。
算数・数学では、公式や定理を自力で発見させようと議論して授業が終わる。
身についた実感が持てず、新たな「勉強嫌い」も生んでいた。

当初は、「詰め込みの復活では」と誤解も反発も強かったが、
小中学校への全国行脚を続けるうち、自治体ぐるみの取り組みも増えた。
「なるほど、と思うのが勉強の醍醐味。
理解する喜びを引き出したい」。
子どもたちが、「面白い」と身を乗り出す姿が原動力だ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00190.htm

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