2011年7月27日水曜日

やる気の秘密(10)集中のためリラックス

(読売 5月26日)

「字が丸く並んでいるね。
対角線にある字を、時計回りに読み上げて下さい。始め!」

埼玉県熊谷市立大里中学校の2年生のクラス。
中島清校長(59)が、ストップウオッチを手に合図。
校長自ら導入を提案した「ビジョントレーニング」の初めての授業。
目を素早く動かして、バラバラの数字を番号順に見つけたり、
複雑な図形を見て正確に写したり。
次々にドリルをこなし、「疲れたけど面白かった」と生徒たち。

同中は過去3年間、「学習意欲向上」を目指して改革に取り組んできた。
生徒への丁寧な声かけ、家庭学習、独自の校内検定などを実施して
一定の成果はあげたが、中島校長は「何か変だ」と感じていた。

疲れやすい。集中がすぐ切れる。
こうした状態を、教師や親は、「だらしない」などと否定的に
受け止めがちだった。
保健体育が専門の中島校長は、感覚や体の調節機能の未発達を
見逃しているのかも、と発想を変えた。

「心身の心地よさが、意欲の源のはず」
中島校長は、企業などで導入されている心身調整法の指導者資格を取得。
2年生の1クラスで朝礼時、CDに合わせて深呼吸や軽い体操で
リラックスするプログラムを実験的に始めた。

最初は、関心を持てず机に伏せていた生徒もいたが、次第に習慣に。
担任の川端慶枝教諭(29)は、「落ち着いて集中でき、授業しやすくなった」
その後、期末テストで飛び抜けて高い学級平均点を取り、
生徒たちも「すごい」と驚いた。

好成績を受け、次に試行を始めたのが、ビジョントレーニング。
瞬時に目のピントを合わせたり、立体感や奥行きを調整したりする
目の機能は、学習や運動効率に大きく影響する。
毎日の校庭掃除の際、何人もの生徒が、見えているはずのリヤカーに
つまずくのを見て、必要性は感じていた。

専門家のアドバイスも仰ぎつつ、気になる子は、授業だけでなく、
校長室にも誘って指導する。
効果は検証途上だが、評判は上々。

「『自分はダメだ』という思いこみを取り除けば、生徒は変わる」と中島校長。
朝のリラックス体操は、今月から全校で取り組んでいる。
他校やPTAからの講演依頼も相次いでいる。
子どもの気持ちを変える処方せんは、意外なところにある。

◆ビジョントレーニング

通常の視力と異なり、眼球運動や目と体の協調性、動体視力など
様々な視覚機能を向上させるための訓練法。
アメリカでは100年以上の歴史があり、「オプトメトリスト」(検眼医)と
呼ばれる国家資格を持つ専門職が、
児童だけでなくスポーツ選手の検査や訓練を担っている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00186.htm

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