2011年7月30日土曜日

子供の運動と食 見直そう 肥満とやせ形、進む二極化

(2011年7月25日 毎日新聞社)

子供たちの体格は平均的によくなっているが、肥満とやせ形が増えている。
体を動かす運動習慣が身についていないことや、
栄養摂取の偏りなどが背景。
夏休みを機に、子供たちの生活スタイルを見直してみては?

子供たちの間では肥満とやせ形が増え、その中間に当たる
標準体重の子供が減る傾向。
文部科学省の学校保健統計調査(10年度)によると、
11歳男子の肥満の割合は約11・1%、
14歳男子では約9・4%と約1割。
70年代後半から肥満の割合は増加傾向。
11歳と14歳の女子でも、約8~9%が肥満。

やせ形の男子も増えている。
11歳のやせ形の割合は約2・6%、14歳では約1・5%。
全体に占める比率は少ないものの、増加傾向。
11歳と14歳女子のやせ形は約3・1%、男子と同様に増加。

肥満とやせ形と二極化する傾向の裏側に、どんな要因があるか?
小熊祐子・慶応大スポーツ医学研究センター准教授(内科専門医)は、
「子供たちが外で遊んだり、スポーツをしたりして、
体を動かす機会が減っていることや、栄養摂取の偏りなどがある」

気軽に遊べる場所が自宅近くに少ないことなどから、
外で遊ぶ子供の姿は昔に比べて減っている。
文科省は、小・中学生の運動時間を「1日に1時間、1週間で
7時間程度が望ましい」としているが、
文科省「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(10年)によると、
1週間の総運動時間が1時間未満の小学男子は10・5%、
同女子では24・2%。
中学生でも男子は9・3%、女子は31・1%。

運動量の少ない子供は、運動部や地域のスポーツクラブに
属していない傾向が見られる。

6~11歳の男女がテレビやゲーム機遊びなど、家で座ったり、
寝転がったりして過ごす時間は、平日で1日平均約5~6時間。
この結果、子供たちの体格はよくなっているのに、
走り幅跳びや持久走など運動能力が低下している。

小熊さんは、「子供の場合、少なくとも1日に1時間程度の運動が必要。
子供の時にしっかりと運動をしておけば、大人になってから、
肥満や高血圧などの病気予防にもつながる」、
親や周囲が意識して、子供が運動できる環境を整えることが大切。

言葉だけで、「運動しなさい」と言っても効果は低い。
子供たちに運動習慣を身につけさせるには、工夫が必要。
日本体育協会は、楽しみながら体を動かす工夫を盛り込んだ
「アクティブ・チャイルド・プログラム」をホームページで公開。
「基礎的な動き」、「運動遊び」、「伝承遊び」、「しかけづくり」など、
五つのプログラムで構成。

子供たちが興味を示すための工夫について、プログラムの作成に
加わった青野博・体協スポーツ科学研究室研究員は、
「地域のスポーツイベントに、家族で積極的に参加したり、
縄跳びや一輪車など体を動かすのに役立つ道具をプレゼントするなど、
親が仕掛けをすることが大切」、意識的に働きかけることが重要。

子供の肥満ややせ形の増加には、食生活の乱れも関係。
肥満が増えているのは、全般的に食べ過ぎが多いのでは、
と思いがちだが、実際はそうではない。
7~14歳のエネルギー摂取量の平均は、01年をピークに減少傾向
(08年の厚生労働省・国民健康・栄養調査)。
食べ過ぎよりも目立つのは、一人で食べる「孤食」、
栄養摂取の偏り、運動不足や遅い就寝時刻など、生活リズムの乱れ。

全エネルギー摂取量に占める脂質の割合は30%が望ましいが、
小中学生の男女とも、半数近くが30%超
(07年の日本スポーツ振興センター調べ)。
脂質の摂取源を見ると、おやつや夜食で取る割合が10%超。

夜食にラーメンを食べるなど、食塩の取り過ぎも目立つ。
貧血防止などに役立つ鉄の摂取でも、推奨量を満たしている
小中学男子は約2~3割、女子では約5~10%とさらに少ない。

管理栄養士の橋本玲子さんによると、食生活の偏りは、
生活スタイルと深く関係。
肥満傾向の子供は、朝食の欠食、一人で食べる孤食、就寝時刻が遅い――
などが共通して見られる。

肥満とやせ形の二極化が生じている要因として、
橋本さんは、「栄養の偏り、運動不足、生活リズムの乱れ」、
「今の子供たちにとっては、エネルギー摂取を抑えつつ、
たんぱく質やビタミン、ミネラルの豊富な栄養価の高い食事を
心掛けることが大切」

食事にも工夫が必要。
のり巻きを弁当用に作る時、たんぱく質と鉄などに富む牛肉やチーズを
具に加えるなど、不足しがちな栄養素の摂取を心掛けることも必要。
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◇家や学校で子供に運動習慣を身につけさせる工夫

(1)授業の始めに短時間のストレッチ運動を取り入れる

(2)運動に役立つ遊具を子供の目につくところに置く

(3)子供と一緒に徒歩や自転車で自然観察など探検に出かける

(4)地域で行われる伝統行事やスポーツイベントに積極的に出かける

(5)運動に役立つ遊具を子供にプレゼントする

(6)親同士で連絡網を作り、アウトドア活動など子供同士で遊べる環境をつくる

(7)目標を達成したら表彰するなど、やる気をもたせる

(アクティブ・チャイルド・プログラムから)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/25/139753/

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