2011年7月24日日曜日

やる気の秘密(7)児童「内閣」授業で「先生」

(読売 5月20日)

「書き順いくよ。一、二、三」。
黒板の前で新しい漢字を教える「先生役」の児童に合わせ、
全員が空中で指を動かす。

東京・世田谷区の東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組。
先生役の児童の席には、担任の沼田晶弘教諭(35)が座り、ノートを代筆。
「自分が教えると思うと、よく勉強するよ」と女子児童。

このクラスは、みんなで選んだ「内閣」が学級をリードし、
授業の運営にも関わる。
総理は、班の中で交代で務め、文部科学、環境、厚生労働の
各大臣の下に各省を置く。
国民ならぬ「クミン(クラス民)」のため、「文科省」はテストの予想問題も作る。
毎週の選挙で「政権交代」もあるから、成果にはこだわる。

沼田教諭は、アメリカでスポーツ経営学やコーチング論を学び、
大学教員から転じた異色の経歴の持ち主。
2年前、担任になった初日、「君たちを信じて任せる」と宣言。
以後、最も意識してきたのは、やる気のスイッチをあえて「切る」こと。

授業の45分間集中し続けるのは難しいが、緩急をつければ勢いづく。
朝の会で、30秒間限定のスピーチ練習。
わっと騒いで一瞬で沈黙する練習。
3度手をたたいたら、その人に注目。
最初はゲーム感覚だったが、すぐに子どもたちは、「オン」、「オフ」を
切り替える快感に目覚めていった。

忍者のように、校内を静かに移動。
全校集会が始まった瞬間、全員で姿勢を正す。
給食を毎日完食する。
自分たちで考えて達成するのが面白くなり、一体感も生まれた。

給食後の掃除は、内閣の段取りの力の見せ所。
先生がパソコンで流す3曲の間で終わらせるため、係は決めずに
全員で流れを見て動く。
ほうきは同じ方向に掃き、使ったぞうきんを誰かがまとめる間に机運び。
子どもたちがテキパキ動き回る中、先生は机で家庭学習ノートに
コメントを返すのに集中。

「今2曲目の半ば。急いで」。
トランシーバーで、内閣メンバーが特別教室への出張掃除組に連絡。
ダンダンダンダン。
全員席につくまで机を打ち鳴らし、総理の合図でハイ、終了。
一瞬で、子どもたちは遊びに散った。
開始から約11分。
当初の半分に短縮し、昼休みに遊ぶ時間も増えた。

「子どもがいいから、先生が取材されるんだよ」
子どもたちの冗談交じりの言葉に、先生はニヤリ。
「自分たちならできる」という自信こそ、クラスの最大の財産だ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110520-OYT8T00156.htm

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