2011年7月25日月曜日

やる気の秘密(8)探求心引き出す「納得感」

(読売 5月21日)

「先生が予定通りまとめようとする授業はイヤ。見え見えだから」、
「教科書通りでいいから一工夫ほしい」。
子どもたちが大人に交じって議論する。

文部科学省が推進する「リアル熟議」が、
「若手教師の育て方、育ち方」をテーマに都内で開かれ、
東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組の代表10人が参加。

進行役を務めた担任の沼田晶弘教諭(35)が熟議終了後、
子どもたちに感想を聞くと、「大人は、上から子どもを見ている。
何を与えるかの話ばかり」と不満の声。

「教育は自立支援」と考える沼田教諭。
「自分たちで決める」運営で自信をつけてきた子どもたちは、
「納得できない」、「リアル(現実的)じゃない」ことに違和感を隠さない。

「デシ・リットル」の単位の勉強では、
「全然使わない単位をなぜ勉強するのか」、と疑問が出る。
先生が、「確かにそうだね。でも、升を使う豆の量り売りには欠かせない
単位なんだって」と教えると、目を輝かせた。

「知りたい」、「やりたい」と思えば、探求心の塊になる。
夏の移動教室では、計画段階から地図を頼りに遠足の距離を求めた。
行きたい公園まで歩くと、何分かかるか?
歩数計で1歩の距離を測り、歩くペースを合わせる作戦も立てた。
当日は13kmもの道のりを、全員が歩ききった。

昨年度、2学期から取り組んだ総合学習のテーマは「映画作り」。
沼田教諭もさすがに「無謀では」と伝えたが、子どもたちは引き下がらない。
監督、脚本からカメラの配置、大道具作りまで分担し、
映画の中心となるダンスも、連日猛練習。
2週間かけて作った小道具が使えないなど、計画変更や失敗にも
「やめたい」という弱音は出なかった。

映画完成を控えた3月、近くの老人ホームでライブ公演が実現。
マイケル・ジャクソンの難しいダンスを踊って喝采を浴びたが、
沼田教諭が「真価を発揮した」と感じたのは、公演の後。

舞台で始まったお年寄りの盆踊り練習に飛び入り。
社交ダンスの相手も買って出て、話もはずんだ。
普段から、「先生の指示待ち」ではこうはいかない。
遠くから見ていた沼田教諭は、「やればできるんですよ」とつぶやいた。

4月の全校集会で、クラスと担任替えが発表。
最後に、1組全員が声をそろえて先生の背中にかけた言葉は、
「いってらっしゃい!」。
成長の証しの一言だった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110521-OYT8T00200.htm

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