2011年7月10日日曜日

おいしさを数式で表す

(日経ヘルス 6月6日)

口に入れた瞬間に感じる「おいしい」という直感的な判断が、
15の簡単な質問表に基づき、計算して導いた数値とよく一致した、
と京都大学大学院農学研究科の伏木亨教授。

第65回日本栄養・食糧学会大会の教育講演での発表。
人は、食べたものがおいしいかどうかを、口に入れてすぐに判断。
「おいしさの判断を左右する要因はせいぜい、3~4個」

伏木教授は、できるだけ簡素化を図り、
以下の4つの項目でおいしさを決定できる。

「(1)=生理的なおいしさ」

体が要求するため、おいしく感じる。
のどが渇いたとき、飲むビールがおいしかったり、
疲れたときに甘いものがおいしかったり、という例。
30分の激しい運動をしたところ、いつもよりも甘いものを欲する。

「(2)=文化によるおいしさ」

子供の頃からの食習慣に合う料理はおいしく、合わない料理はおいしくない。
関東の人は甘い卵焼きが好きだが、関西の人はだしの利いた
塩味の卵焼きが好きで、甘い卵焼きを好まない、というのが一例。
「特に匂いが決め手になることが多く、発酵によるうまさは
文化に関わらず共通で感じられるが、匂いで好き嫌いが分かれる」

「(3)=情報によるおいしさ」

「この味をおいしいと考える」と学習すること。
「赤ワインのおいしさは渋みのバランス」、
「この味は、美食家のあの人がおいしいといっていた」などの情報をもとに、
人はおいしい味の判断基準を身につけていく。

「(4)=報酬によるおいしさ」

食べることで快楽を感じ、やみつきになる成分が含まれているもの。
「脂肪、砂糖、うまみのあるだしには、繰り返し食べたいという
執着を生み出す力がある」

(1)~(4)のうち、(1)は食べる側の条件であり、食べ物そのもののおいしさを
決定するものではないため除き、(2)、(3)、(4)の3つの要素を組み合わせて、
おいしさを表す数式を導いた。

被験者に食品を試食させ、直感的においしいかどうかを、
VAS法※で評価してもらい、上記のおいしさを決める要素について問う
15の質問表(やみつきになりそうな味か、食べなれた味か)への答えを
それぞれ点数化。
この両方を合わせて、下記のような重回帰式を得た。

Y(おいしさ)=1.74×((4)報酬によるおいしさ)+1.48×
((3)情報によるおいしさ)+0.38×((2)文化によるおいしさ)+8.77

重回帰式の係数は、個人もしくは母集団によって異なるが、
市販の12種類の食品(カレー、親子丼、たこ焼き、グラタンなど)を
用いて算出した重回帰式は、他の食品の評価にも有効で、
質問表の点数を数式にあてはめて算出した評価値と、
VAS法による直感的な総合評価値は、高い相関。

「質問表はまだ見直す余地はあり、質問項目はもっと減らせる」

※VAS(Visual Analogue Scale)法

痛みなどの主観的な評価を客観的な数値に置き換える方法。
痛みの場合、左端は「痛みなし」、右端は「考えられる最大の痛み」とした
100mmの直線を引き、自分が現在感じている痛みが直線上のどこに
位置するかを書き込む。
今回は、左端が「おいしくない」、右端が「おいしい」として使用。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20110606/111116/

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