(読売 9月16日)
社会人基礎力を育成するカギは、評価のシステムだ。
「君、ちょっと遠慮しすぎなんじゃない?」
大阪大学大学院工学研究科を修了した笹井謙一さん(25)は、
2年前、共同研究で企業から訪れていた講師の指摘に今も感謝。
研究を進めるには、他の研究室の実験装置を使わせてもらう必要。
「院生の立場で、よその教授に直接依頼などしていいのだろうか」
笹井さんがためらい、研究が進まないのを見て、
講師はズバリ指摘した。
「目上の人に頼むことを怖がっていた」
そう自覚した笹井さんは、依頼の仕方を研究室の先輩に尋ねた。
「なぜ装置を使いたいのか、どういう計画か、
相手にもメリットがあるのか。
それを説明すれば話は通ることがわかった」
大手電機メーカーで働いているが、その経験が生きている。
経済産業省は、学生の社会人基礎力を育成するモデル大学に対し、
学生の能力評価を求めている。
大学は、各学生が3能力12要素の基礎力の到達度を、
「発揮できなかった(レベル1)」、「何とかできた(同2)」、
「大いにできた(同3)」のいずれかで記録。
評価は、学生の「自己評価」と、教員や企業社員による
「他者評価」があり、プログラムの事前・中間・事後の3回行うのが基本。
同省は、「学生は自分の行動を振り返り、成長を実感できる」
大阪大では、基礎力12要素を66項目に細分化した
独自の評価シートを作成、レベルも5段階に拡大。
企業社員を月1回招き、学生の研究に助言や評価も依頼する
「インターンシップ・オン・キャンパス」を実践。
同大の北岡康夫教授(43)によると、以前は、教員の助言や評価に
ショックを受けて講義に出なくなる学生もいて、指導が難しかった。
今は、「評価シートの活用によって、学生自身に弱みや強みを
気付かせることができ、教員も指導しやすくなった」
基礎力のモデル大学として3年目に入った宮城大学も、
独自の評価方法を導入。
文系・理系が融合した全国唯一の「事業構想学部」の1~4年生が、
基礎力プログラムを受講。
1、2年生は授業が中心の「学内社会人基礎力」、
3、4年生は企業や自治体と連携した「学外社会人基礎力」を育成。
評価方法もこれに合わせ、1、2年生は自己評価と教員の評価によって
自分の基礎力を認識。
3、4年生にはそれに加え、他学生と企業社員らも評価。
同大の富樫敦教授(53)は、「作業の負担軽減が今後の課題」
学生や教員らがインターネット上で評価シートを書き込める
ITシステムの開発を進めている。
基礎力が本物に育つよう、模索が続く。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090916-OYT8T00241.htm
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