2009年9月27日日曜日

社会人基礎力(6)能力評価 成長を実感

(読売 9月16日)

社会人基礎力を育成するカギは、評価のシステムだ。

「君、ちょっと遠慮しすぎなんじゃない?」
大阪大学大学院工学研究科を修了した笹井謙一さん(25)は、
2年前、共同研究で企業から訪れていた講師の指摘に今も感謝。

研究を進めるには、他の研究室の実験装置を使わせてもらう必要。
「院生の立場で、よその教授に直接依頼などしていいのだろうか」
笹井さんがためらい、研究が進まないのを見て、
講師はズバリ指摘した。

「目上の人に頼むことを怖がっていた」
そう自覚した笹井さんは、依頼の仕方を研究室の先輩に尋ねた。
「なぜ装置を使いたいのか、どういう計画か、
相手にもメリットがあるのか。
それを説明すれば話は通ることがわかった」
大手電機メーカーで働いているが、その経験が生きている。

経済産業省は、学生の社会人基礎力を育成するモデル大学に対し、
学生の能力評価を求めている。
大学は、各学生が3能力12要素の基礎力の到達度を、
「発揮できなかった(レベル1)」、「何とかできた(同2)」、
「大いにできた(同3)」のいずれかで記録。

評価は、学生の「自己評価」と、教員や企業社員による
「他者評価」があり、プログラムの事前・中間・事後の3回行うのが基本。
同省は、「学生は自分の行動を振り返り、成長を実感できる」

大阪大では、基礎力12要素を66項目に細分化した
独自の評価シートを作成、レベルも5段階に拡大。
企業社員を月1回招き、学生の研究に助言や評価も依頼する
「インターンシップ・オン・キャンパス」を実践。

同大の北岡康夫教授(43)によると、以前は、教員の助言や評価に
ショックを受けて講義に出なくなる学生もいて、指導が難しかった。
今は、「評価シートの活用によって、学生自身に弱みや強みを
気付かせることができ、教員も指導しやすくなった」

基礎力のモデル大学として3年目に入った宮城大学も、
独自の評価方法を導入。

文系・理系が融合した全国唯一の「事業構想学部」の1~4年生が、
基礎力プログラムを受講。
1、2年生は授業が中心の「学内社会人基礎力」、
3、4年生は企業や自治体と連携した「学外社会人基礎力」を育成。

評価方法もこれに合わせ、1、2年生は自己評価と教員の評価によって
自分の基礎力を認識。
3、4年生にはそれに加え、他学生と企業社員らも評価。

同大の富樫敦教授(53)は、「作業の負担軽減が今後の課題」
学生や教員らがインターネット上で評価シートを書き込める
ITシステムの開発を進めている。

基礎力が本物に育つよう、模索が続く。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090916-OYT8T00241.htm

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