2009年10月3日土曜日

農業に学ぶ(4)森の魅力知り進路選び

(読売 9月26日)

実習の工夫と地域交流で、林業教育の未来を探る。

鳥取県立智頭農林高校から、山道をマイクロバスに
揺られること25分。同校演習林に着いた。
作業着姿の森林科学科の生徒6人は、ヘルメット、ナタ、
ノコギリの装備を点検、小林徹教諭(46)の先導で歩き出した。

一汗かいて到着したのは、秘密基地のような「ツリーハウス」
7年前、先輩たちが小林教諭の指導で組み立てた。
立ち木の数メートルの高さに桟を渡し、
板を敷いてデッキ付きの小屋がしつらえてある。
部屋は、一間だけで4畳半ほど。
ロープを使って木に登るツリーイング、高い枝からつり下げた
ブランコなど、遊べる仕掛けが施されている。

「こうやるんです」と3年の久保仁君(17)が、
ブランコに乗って大きな弧を描いて見せた。
「雲行きが怪しいので早めにやろう。手分けして枝打ちを始めて!」
小林教諭のきびきびした声が響く。
生徒たちは枝をナタで切り落とし、付近を整備する。
しばらくすると、小雨がぱらついてきた。
「残念だけどきょうはここまで」。山の天気は変わりやすい。

林業の衰退で、林業専門の高校や生徒数も減少し、
林業教育に影響を与えている。
自然や環境への関心の高まりがあり、
森の持つレクリエーション機能が見直されている。

同高では、森林ガイドやキャンプの実践方法など
野外活動の指導者に必要な能力を養成しようと、
2000年から「アウトドア」科目を取り入れた。
ツリーハウスをベースに、森に生息する動物や野鳥を
観察調査したり、小学生や市民を招き、森の楽しみ方を伝える
交流も行っている。

岡山県西粟倉村から通う3年の白旗伸治君(17)は、
実家が山を持っている。
「ゲームなんかするより、山に入っていたい。
将来は、森林インストラクター志望です」と明確な夢がある。

こずえをわたるさわやかな風、普段は体験できない鳥瞰……。
“秘密基地”では、五感で森の深さを学ぶことができる。
「林業の進路は厳しいですが、森林の良さを伝えられる仕事に
進んでくれれば」と小林教諭は願っている。

全国で唯一、林業の名前を校名に残す天竜林業高校(浜松市)。
木材の加工から販売までの流れを確立する研究などが評価され、
07年度に国の支援制度「目指せスペシャリスト」にも指定。

指定最終年度の今年度は、「バイオトイレ」を年間テーマ。
木材を森林科学科が用意、上屋は建築デザイン科が建て、
バイオ装置は環境システム科、とうまく連携。
11月の文化祭で発表。

地元商店街の協力で、木工製品を販売する「チャレンジショップ」も、
今年は9月20日に開催。
評判が口コミで広がって行列もでき、売上点数は過去2回を上回った。

大石常夫教頭(57)は、「大きく言えば、地球環境を守る人材作り。
まずは、森林や木に親しむ楽しさを教育の場から広めたい」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090926-OYT8T00320.htm

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