(日経 12月17日)
CO2排出をゼロとみなし、環境負荷が少ないほか、食料と競合しない
バイオ燃料を、国内で製造しようとする動きが進んでいる。
新日本石油は、トヨタ自動車や三菱重工業などと6社で、
「バイオエタノール革新技術研究組合」を組織、
食料に使わない植物を使ったバイオ燃料の研究を進めている。
組合の理事長を務める松村幾敏・新日本石油副社長。
——ブラジルや米国では、大規模な農場で作った農作物を使って
バイオエタノールを大量に生産。
日本で、経済的なバイオエタノールの生産は可能か?
「目標としている1Lあたり40円での生産は、十分に可能。
現在、6社に加えて大学など研究機関の力を借りて
技術開発を進めている。
育種や収集、糖化などバイオエタノールの製造工程を6つに分け、
各社が工程内のコストを現在の10分の1~20分の1にすることに
取り組んでいる。
現在の工程表では、2015年に技術を確立し、年産1万kL程度の
実証プラントを立ち上げる。
20年までには、20万kL程度の量産プラントを立ち上げたい」
——国内で栽培した原料を使っていても、
40円の水準を維持することはできるのか?
「東京大学農学部の試験場で、いろいろな植物を作って検討。
トヨタも、栽培技術をいろいろと持っており、
各社の知見を持ち寄って、可能性を検討。
条件になるのが、1年を通じて収穫ができること。
燃料の需要は、周年を通じてあるため、ある期間だけしか
収穫できないのでは、供給が安定しない。
原料の有力な候補と考えている植物の1つが、
多年生のエリアンサスという巨大なススキ。
種をまいたら、すぐに芽が出てきて、半年もすれば8メートル近くに。
耕作の手間がかからず、短期間で大きくなり、栽培の効率が高い。
このプロジェクトは、耕作ができない場所を有効に使うという目的も。
目標としている20万kLの生産に、1.2haにも及ぶ広い土地が必要、
土地代はゼロであることが40円の実現の条件」
——トヨタと、次世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けた
研究も進めていた。
「パームヤシの植物油脂を、水素と反応させて製造する
水素化バイオ燃料(BHD)の生産を、マレーシアで計画。
国内でも、東京都のハイブリッドバスに試験導入し、
北海道洞爺湖サミットでも利用。
昨年の原油高騰時、パーム油の価格も急騰、
採算が見とおせなくなった。
食用にもなるパームヤシを、燃料に使うことへの批判も多い。
昨夏、マレーシアでの事業化の計画はいったん見直すことに。
新日石としては、BHDの技術を東南アジアの諸国に提供、
原油の権益獲得のための交渉にもメリットは出てくるかと
期待したが、そうはいかなかった」
——バイオ燃料は、ガソリンなど石油燃料を代替するものになるか?
「全部を代替するということはない。
石油燃料とは、量の面で圧倒的な差がある。
バイオエタノールは、国内で生産しているコメを全部使っても、
年間に400万kLしか作ることができない。
ガソリンの国内需要は減ってきたとはいえ、5800万kL。
石油に置き換わるメーンの燃料にはならない。
一部でも代替できれば、その意味合いは大きい。
新産業の構築にもつながるため、米国も多額の費用をかけて
研究を進めている。
国内でのバイオ燃料作りが、非常に低い国産エネルギーの割合を
わずかでも引き上げることにつながる」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091216.html
0 件のコメント:
コメントを投稿