2010年1月1日金曜日

幼児教育(6)言葉をかけ自律性育む

(読売 12月23日)

子どもたちに手本を示しながら、言葉の発達を促す。

「もういらない」、
「まだ足りないから持ってくる」

京都市伏見区の京都教育大学付属幼稚園。
4歳児の「ふじグループ」の園児3人が、
2人対1人で言い争いを始めた。
間もなく始まるグループ活動の準備で、並べるイスの数を巡って
意見が食い違った。
高野史朗教諭(28)が、その声に気付き、近づいてきた。
「じゃあ、数を数えよう」

高野教諭の提案を聞いた園児たちが、運んできたイスを
数えてみると、18脚あった。
「ふじグループは何人いるの?」、「きょうはお休みの人は?」
高野教諭は、丁寧に声を掛けながら確認を促した。

その結果、園児たちは「じゃあ18だね」と結論を出し、
いさかいは収まった。
「気軽に答えを言ってしまうのは簡単だが、
双方が納得できる形で終えたいと思った」
新たな提案を機に、園児の思考が切り替わり、問題は解決。

開園124年目の同園は、20年前に自由保育を導入。
自由な遊びを通して、自ら意思疎通する力を持つ子どもを
育てることを目指している。
こうした能力を獲得するためには、きっかけとなる言葉が重要では。
国語学者でもある森山卓郎園長(49)が、
その一つとして注目したのが、「じゃあ」という言葉。

「ブランコ代わって」と何度も求められた園児が、
「じゃあ、代わってあげる」と拒否から一転、
相手の気持ちを受け止めることがある。
実際、イスを巡る言い争いでも、「じゃあ」という助け舟が
対人関係がこじれるのを防ぐきっかけに。

森山園長は、「先生は、子どものモデル。
実際の場面を経験することで、子どもたちも
コミュニケーションの力がつく

言葉に心を込めることにも腐心する。
光村智香子教諭(34)は、園児とプランターに
チューリップの球根を植えた。
光村教諭が、「葉っぱのお布団をかけるのよ」と、ふんわりと
葉っぱをかぶせ、指を口に添えて「おやすみ」とささやくと、
園児もまねをして、口々に「おやすみ」と声をかけた。
霜対策だが、傍らで観察していた鍋島惠美副園長(58)は、
「球根を人にたとえることで、ストンと子どもの気持ちに入っていく。
言葉に心情が伴うことが、コミュニケーションには大事

同園では、こうした意思疎通の能力や生きた言葉の獲得が、
意欲につながると考えている。
卒園生が多く在籍する同大付属高校の斉藤正治副校長(57)は、
「付属出身の子は、勉強以外の活動にも積極的に参加する
傾向が強い」

言葉の力の基礎を築く幼児期。
場面に応じて工夫されたかかわり方が、
子どもたちの自律性を育んでいる。

◆メモ

玉川大学の佐藤久美子教授(言語心理学)によると、
言葉の基礎ができるのは2歳ごろ。
子どもが「電車」と言ったら、「電車だね」と相づちを打つなど、
親子で互いの言葉をまねることが語彙力の発達につながる。
話す間を与え、言葉が出たらすぐに返してあげるのが効果的。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091223-OYT8T00300.htm

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