2009年12月19日土曜日

コンセントは? EVに思わぬ難敵

(日経 2009-12-07)

地球温暖化対策の切り札として、電気自動車が注目。
日本エネルギー経済研究所によると、発電の過程で出る
CO2を含めても、1km走行あたりの排出量は57gにとどまり、
ガソリン車の176gやハイブリッド車の94gに比べ、かなり低い水準。

普及に向けた課題も多い。
クルマそのものの課題としては、走行距離の短さと値段の高さがあり、
社会インフラ、すなわち充電設備の普及について考えてみたい。

電気自動車用の高速充電装置を1基装備するのに、
どのくらい費用がかかるか?
充電装置自体の価格は約350万円。
かなり高めだが、いずれ量産化が進めば、急速に安くなる。

装置の値段は、全体のコストの氷山の一角。
高速充電するためには、新たな受電設備が必要になるケースが多く、
大型のトランス(変圧器)などを導入する必要。
設置する場所によって、構内の配電網にも手を加えなければならない。

ネクスコ東日本(東日本高速道路会社)は、
今年度末までに首都圏のパーキングエリア4カ所に
高速充電設備を設置する計画、1カ所あたりの平均費用は
2500万円から3000万円に達する。

大きな企業なら、「CSR(企業の社会的責任)の一環」とみなして
出せない金額ではない。
街のガソリンスタンドが投資するには、相当思い切らなければ。
少なくとも電気自動車が普及する前に、
先行投資と割り切ってポンと出せる額ではなさそう。

普通の家庭はどうか?
夜間に長時間かけて、電気自動車(プラグイン車も同じ)に充電すると
想定すれば、高速充電は必要なく、普通のコンセントがあればいい。
敷地内に駐車場のある一戸建ての場合、
戸外にコンセントを新設すればOK。
手間も工事費も、たいしてかからない。

問題は、マンションのような集合住宅で、
地下に共同の駐車場があるケース、家から少し離れたところに
駐車スペースを借りているようなケース。

これらの場合、充電用のコンセントは設置されていないので、
新たにそこまで電線を引っ張る必要。
マンションなら共用スペースの工事なので、住民の賛成が必要だが、
これが承認される見込みはきわめて低い。
電気自動車やプラグイン車に乗りたい人は、
マンション住人の間でも当初はごく少数派。
その人たちのために、他の多くの住民が配電網敷設の
費用負担を受け入れるとは思えない。

賃貸駐車場でも事情は同じ。
駐車場のオーナーは、できるだけ新たな投資はしたくない。
借り手の1人や2人がコンセントをつけろと言っても、
「それならヨソで借りてくれ」と言われるのがオチ。
日産自動車の担当者が、本社周辺のコインパーキングのオーナーに
「充電のための設備を入れてほしい」と働きかけても、
誰も耳を貸さなかった。

電気自動車やプラグイン車が普及するには、
あちこちにコンセントが存在する電源の「ユビキタス(遍在)性」が前提。
その費用をだれが負担するのか?
電気自動車やプラグイン車の普及をめざす自動車会社と、
電力の需要拡大に取り組む電力会社、
政府や自治体が協力して取り組むべき大きなテーマ。
この問題にしっかりした解答を示すことが、
電気自動車が本格的に普及するための出発点。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091201.html

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