2009年12月13日日曜日

特別支援教育(5)高専 5年で深く広く

(読売 12月8日)

5年間学ぶ高等専門学校では、息の長い特別支援教育が必要。

「その後、就職活動の方はどう?」
「どこも厳しいですね。資格を取ろうと勉強しています」
佐世保工業高等専門学校を、卒業生の
中林健司さん(仮名)(22)が訪れた。
特別支援教育コーディネーターの松尾秀樹教授(51)に、
就職などの相談をするため。

同校は、発達障害やその疑いがある学生に対し、
「修学」、「就労」、「生活」の観点で支援。
学業不振の学生に対し、個別指導したり、作業療法士ら専門家に
面談してもらうなど、学生一人ひとりに応じた支援を行っている。

「高専は一般の高校より、発達障害のある学生が多い」。
文部科学省によると、発達障害など「困難のある生徒」は
全日制高校に1・8%、同校では4%近く(約30人)。
発達障害がある学生は、理科・数学が得意な場合が多いこと、
高専は寮生活ができ、保護者がコミュニケーション能力の向上を
期待して入学させること――などが理由。

同校を定期的に訪れる長崎大学の岩永竜一郎准教授(41)
(作業療法学)は、「発達障害がある高専の学生は、
非常に優秀な人と、進級が難しい人と、二極化している
高専の授業についていくのは大変。
各科目で、60点以上取らないと留年に。
実験リポートの提出などをこなせず、中退する学生もいるため、
対策が求められていた。

同校が、特別支援教育に本格的に取り組んだのは、
中林さんへの支援がきっかけ。
アスペルガー症候群の中林さんは、数学は得意で、
知能指数(IQ)も123と高い。
文章をまとめるのが苦手で、リポートを期限までに出せないことも。
会話がかみ合わず、早とちりも多かったため、
同級生にからかわれた。
教室で大声を出し、机を倒すなどの癇癪を起こす二次的障害も。

当時、学生相談室長で、自分も軽い知的障害の子どもを持つ
松尾教授は、「外部機関も含めた支援体制が必要」
校長らに訴えた。
卒業後も社会に適応できるように、
同県発達障害者支援センターや長崎障害者職業センターとの
連携が実現。
同級生には、中林さんの特性を説明し、
母親とも相談を重ねるなど、周囲にも理解を求めてきた。

中林さんは、途中1年留年したが、昨春に無事卒業。
コミュニケーションもうまくなり、今は「学校で勉強した
電気関係の仕事に就きたい」と求職中。
第3種電気主任技術者の国家試験に合格し、
自動車教習所にも通うなど、自立に向けて努力。

高専は5年間と長く、継続した支援を行うには適している。
今後、全国的にも実践が広まるだろう。

◆アスペルガー症候群

知的障害がない発達障害の一つ、脳の機能障害。
社会性、コミュニケーション、想像力・創造性に障害がある。
一見、障害があるように見えない場合が多く、
周囲から理解されにくい面。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091208-OYT8T00363.htm

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