2007年11月16日金曜日

新訳百人一首 いにしえの感性 英文に ピーター・マクミラン杏林大教授

(毎日 2007.11.13)

これまでもたびたび英訳されてきた「小倉百人一首」の新訳が、
米国コロンビア大学出版局から刊行。
訳者は、アイルランド人のピーター・マクミランさん(48)。
杏林大学外国語学部の教授。

「10年ほど前にコロンビア大学で、ドナルド・キーン先生に
日本の古典文学を学びました。このときに『小倉百人一首』と出合い、
日本人の感性が凝縮されたこの詩集に強く引かれました」

詩人でもあるマクミランさんは、これまでの英訳について
「詩的とは言いがたい。むしろ散文といった方がいいかもしれません」。
翻訳にあたっては、英語の詩として成立するように心を砕いた。

百首の中でもっとも手ごわかったのは、小野小町の
≪花の色はうつりにけりないたずらにわが身世にふるながめせしまに≫。

「このすばらしい歌を翻訳するのは、ほとんど不可能。
≪花≫には、≪さくら≫≪美≫≪詩的・芸術的才能≫が、
≪色≫には、≪色≫≪色気≫≪肉欲≫が、
≪うつる≫には、≪色があせる≫≪変わる≫≪散る≫といった意味が込められ、
それらが複合的に絡み合って歌の世界を構築している」。

柿本人麻呂の
≪あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む≫を、
≪ながながし≫に着目して単語を配列するなど、
訳にとどまらず隅々にまで工夫を凝らした。

この英訳を高く評価するキーンさんは、
「ピーター・マクミランによる小倉百人一首の英訳は、
『美しい』の一言で片付けられてしまうことが多かったこの歌集に、
本来の意義と美を回復してくれた。
これまでの小倉百人一首の英訳の中でも、断然最高の逸品」

英訳本はコロンビア大学で、日本の古典を学ぶ学生のテキストとして
利用されることになるが、マクミランさんは別の期待も。

「残念なことに、日本はいま古典とはほとんど縁のない社会に。
私の英訳を通じて、日本人が日本の古典と出合うのも面白いのではないか」。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/071113/acd0711130809001-n1.htm

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