2008年10月15日水曜日

ものづくり(2)映画セット 学生の手で

(読売 10月8日)

映画制作を通じて、学生たちに手作りの価値を伝える大学がある。

コンクリート打ちっ放しの作業場で、
学生たちが劇場用映画「築城せよ!」のセット作りに汗を流していた。
愛知工業大学にある「みらい工房」。
学生の創作活動を支援するため、工作機械などを備えている。
映画は、来年の同大開学50周年を記念して制作、来夏に公開予定。
大学はスポンサーで、ヒロインは愛工大生という設定。

学生たちは、ベニヤ板を3人がかりで力いっぱい丸め、
電動工具で木枠に打ち付ける。
全長4メートルほどの筒状のベニヤ板が、映画の中では「井戸」に。
工房の隅には「石垣」が積まれていた。
発泡スチロールの表面をバーナーで焼いて凹凸を作り、塗料で色付け。
工学部4年の高木章広さん(21)は、
「劇場でこのセットがどんな風に映るのか楽しみ」

高度な機器を駆使してハイテクを学ぶことも大切だが、土台はあくまで手作り。
そんな考え方に立って、同大は8年前から選択科目
「ものづくり文化」を開いてきた。
トヨタ自動車の技術者をはじめ、作家、写真家など、
様々な分野のスペシャリストからものづくりの本質や魅力を聞く。
講師はすでに40人を超えた。

5年前にできた「みらい工房」では、「ものづくり文化」の受講生が、
山車などを作ってきた。
講義を担当する森豪教授(60)は、
「講師の話に興味を持ち、実際に手と足を動かすことで、
パソコンの前に座っているだけでは得られない発想が生まれる」

映画制作は、こうした活動の集大成。
講義を通じてプロデューサーらと知り合い、話が進んだ。

映画は、戦国武将の霊が町役場の職員に乗り移り、
数々の困難を克服しながら、地域住民や大学生らと
段ボールの城を築き上げていくというストーリー。
撮影で実際に作られる城の高さは20メートルだが、
高木さんたち美術班のメンバーは、高さ4メートルほどの縮小版の制作を始めた。

最初は失敗の連続だったが、強度実験を繰り返すうち、
細長く切った段ボールを格子状に組んで何層にも重ねることで、
学生20人以上が乗っても崩れない「天守閣の床」を作り上げた。
この技術が映画の中でも取り入れられる。
「1人では難しくても、仲間と力を合わせれば乗り越えられる」と高木さんは実感。

撮影は、同大周辺で9月25日から始まった。
美術補助やエキストラなど、参加する学生は総勢500人。
11月上旬までの撮影期間中、出演者やスタッフの多くが学内の寮で寝泊まり。
学生は、プロの技術に触れながら映画作りを楽しんでいる。

「多くの人たちの技術と情熱が集結して、映画という一つの作品ができ上がる。
学生に本物のものづくりを肌で感じてほしい」と森教授。
映画の中で、城は最後に壊されるというが、学生たちは完成した作品から
大きな達成感を得るはずだ。

◆「築城せよ!」

監督は古波津陽さん。2005年に「築城せよ。」というタイトルの短編を制作。
主役の町職員と戦国武将の2役を演じるのは、
歌舞伎役者の片岡愛之助さん、ヒロインは海老瀬はなさん。
江守徹さん、阿藤快さん、藤田朋子さんらが脇を固める。
地域住民も、多くがエキストラとして参加。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081008-OYT8T00227.htm

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