2008年10月18日土曜日

ものづくり(5)中学生向けの企画模索

(読売 10月11日)

ものづくりのすそ野を広げようと、大学や教育委員会が模索する。

岐阜大学に、はしゃいだ声が響いていた。
小学生が、手に持ったプロペラ式模型飛行機を飛ばしている。
着地した時に、プロペラ部分が外れて壊れてしまっても笑顔は消えない。
すぐに修復が可能だからだ。
男児の1人は、「針金での固定の仕方がよくなかったのかな」と教室に戻った。

同大教育学部の技術教育講座が主催し、8月初めに行われた
「こどものためのものづくり教室」。
小学1年から中学3年までの100人が、大学生や大学院生に教わりながら、
飛行機、銅鏡、げた、ラジオ作りに励んでいた。
銅鏡作りは、女子向け。げた作りは、ゲゲゲの鬼太郎ブームを反映。
子供4人に指導役が1人。分からなければ、すぐ聞ける。
接着剤やカッターを初めて使った子も。

講座は、中学校の技術科の教師を目指す学生が属するだけに、
準備は学生に任されている。
材料を集めたり、木にドリルで穴を開けて準備したり。
子供に分かりやすいようにまとめた説明書も作る。
準備を通して学生に、ものづくりを経験させる狙いも。

今年で10年目を迎えた企画を見続けた担当の吉田昌春教授(65)は、
「カッターを使ったことのない小学生が依然として多い。
学校でのものづくり体験が少なすぎる」と危機感を募らせる。

これまでの参加者は、延べ881人。
繰り返し、参加する子供も多いとはいえ、課題は中学生の参加者の少なさ。
今年も全体の1割にとどまった。
吉田教授も、「中学生を引き付ける題材も、何か考えていかなければ」

東京都教育委員会が、費用の半額を補助する形で、昨年から始めた
「わくわくどきどき夏休み工作スタジオ」も、事情は同じ。

今年は、工業高校6校で教諭が講師となった。
参加費は1000~2500円で、小中学生1282人に、手作り時計や指輪、
キーホルダーなどの製作を指導。
小学生の参加希望者が定員の3倍近くあって、抽選で参加者を
絞り込んだのに対し、中学生の参加者は346人にとどまっていた。

中学生の参加は、企画次第ともいえる。
都立工芸高校では、中学生の参加者のほぼ3分の1に当たる
111人が足を運んだ。
エコバッグやデザインクロック、銀のスプーンの製作など、
やや大人向きの題材を選んだ。

都教委の担当者は、「夏休み中の中学生は、部活動や進学準備で忙しく、
なかなか引き込めていないのが現状。
題材を工夫しながら、全体の企画数を増やしていけば、
中学生の参加者増が見込めるのでは」

小学生には受け入れられやすい、ものづくり体験教室。
その流れを断ち切らず、いかに中学生の参加を増やすか、
模索が続いている。

◆中学校のものづくり教育

1998年改訂の学習指導要領は、「技術・家庭」の3年の標準授業時数を、
従来の年70~105時間から35時間に減らした。
新指導要領も、この時間はそのまま。
新たに3年間で、「生物育成に関する技術」など4項目を必修化するため、
現場からは、工作的なものづくりの時間が足りないと言う声も。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081011-OYT8T00265.htm

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