2008年10月14日火曜日

生体観察に欠かせない技術 オワンクラゲのタンパク質

(共同通信社 2008年10月10日)

生物を構成する細胞やタンパク質の動きを観察し、
病気が起こるメカニズムを解明しようとする近年の生命科学関連の
研究論文で、必ずといっていいほど登場する緑色蛍光タンパク質(GFP)

小さくて目に見えない分子の世界を、明るく照らすこの"道具"の
開発者たちに、今年のノーベル賞化学賞が贈られる。

透明で、100分の1ミリサイズの細胞を観察することは
それ自体、骨の折れる作業。
ところが、生体に起こっていることを本当に理解するには、
その中で化学的な反応を起こしているタンパク質や糖質など、
さらに小さい物質の動きを追うことが不可欠。
これには、通常の光学顕微鏡の能力を超える力が必要。

GFPのすごいところは、最重要なタンパク質にくっつき、
紫外光を当てると緑色の光を発して"目印"となる点。
注目するタンパク質がいつどこで、何をしているのかなどを直接、
目で見ることを可能に。

GFPは、別の生体に組み込まれた時にも、目立った害を及ぼさないため、
生体を生きた状態で見られるという利点。

これを応用すると、細胞間に張り巡らされる血管が、
どのような過程を経て形成されるのかが分かる。
この知識を利用し、がん細胞に栄養や酸素を供給する新たな血管を
つくらせないことで、がんの増殖を抑える研究が進みつつある。

アルツハイマー病では、神経細胞が壊れていく様子を、
感染症では病原体が体内で増殖する過程を観察、
病気の進行を抑える対策を立てるのに役立っている。
薬を投与した際の生体の反応を調べることもできるため、
副作用の少ない薬剤の開発につながると期待。

山中伸弥京都大教授が開発して、世界を驚かせた新型万能細胞
「iPS細胞」でも、必要な遺伝子が働いているかどうかを確認するのに使われた。

ノーベル賞受賞が決まった下村脩・米ボストン大名誉教授は、
家族や研究スタッフも動員、米西海岸の桟橋から長い柄のついた網で
来る日も来る日も海面に漂うクラゲの捕獲を続けた結果、
オワンクラゲからGFPを抽出することに成功。
なぜ光るのか、のメカニズムも明らかに。

最初は、下村さん自身も「何かの役に立つとは思わなかった」。
下村さん自身を含め、その有用性を気付かせてくれたのが、
共同受賞のマーティン・チャルフィーさん。
GFPを生体に組み込み、目印になることを示した。

同じく共同受賞のロジャー・チェンさんは、GFPが出す色の
バリエーションを増やし、さらに使い勝手を良くした。
別々に活動していた3人だが、研究テーマがリレーのように引き継がれ、
大きな業績へとつながった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81183

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