(日経 2009-03-13)
外骨格型と呼ばれるロボットが、将来有望な技術として脚光。
筑波大学の山海嘉之教授らが開発したロボットスーツ「HAL」が
先陣を切り、昨秋リース販売を始めた影響が大きい。
米国でも、同型ロボットの開発は進み、商品化は目前。
HALは、世界市場を席巻できるだろうか?
山海教授が最高経営責任者を兼ねるベンチャー企業、
サイバーダイン(つくば市)が大和ハウス工業を通じて発売したHALは、
足に障害を持つ患者や脚力が弱くなった高齢者の歩行を助ける。
関節近くの皮膚に張り付けた電位センサーが、
筋肉を動かそうと伝わってきた神経信号をとらえ、
制御装置が関節の曲げ伸ばしを判定し、装着した人と一体的にモーターを駆動。
筋肉が動き出すより、ほんのわずかだけ早く動かせるため、動作が自然。
生後まもなく病気で足がまひした患者が、自分の意思で足を動かせるようになり、
脳卒中でひざを曲げられない患者が、ゆっくりと曲げられるようになるなどの効果。
リハビリテーション用とか医療機器とうたうと、薬事法上の許認可が関係、
山海教授もこうした言葉を避けて解説。
研究は面白くても、事業化の遠いヒューマノイド(人間型)ロボットとは
一線を画し、人間の動きを支援する機能が実用的。
研究段階では、全身用のスーツも作っているし、
ひじだけのような単一の関節用のHALも試作済みで、製品化を準備。
衰えた機能を支援する分野だけでなく、重労働を補助する用途や
災害救助の現場などでも応用できる。
山海教授はもう1つ、面白い利用方法を考えている。
HALは、装着者の動作を学び取る機能も備える。
例えば、イチローや松井秀喜選手ら一流選手の打撃動作を記録し、
「未来の博物館でHALを装着し、名選手の打撃を実体験」(山海教授)
できるようになるかも。
娯楽用途の開拓はこれからの楽しみだ。
達筆な人の指や腕の動かし方を写し取れれば、
字が下手な人の訓練にも使えそう。
効果的な教育手段になるだろう。
関節が反対側に回らないストッパーや、過剰な力を出さない制限をかけるなど、
安全対策は多重に備えている。
両脚の動作支援用の場合、1時間の充電で約90分間しか動かせないが、
これからの電池の開発で、動作時間はどんどん伸ばせるだろう。
汗に弱いセンサーも課題だが、対策もあり大きな問題にはならない。
障害者や高齢者用には、HALを個々の装着者に適合させる作業が必要で、
量産に向かない点が、今のところ営業を拡大するうえで最大の悩み。
山梨大学などと協力して歩行補助機器を開発した大日本印刷や、
体重を支え歩行を助ける機器を試作したホンダなど、
サイバーダインに追随する動き。
2011年には、45億円規模の市場に成長するとの予測。
日本発のロボットスーツ技術が世界に通用すれば、一大産業に発展。
強敵は、軍事用の開発計画が進行する米国の企業。
米レイセオンやロッキードマーチンの大手は関連ベンチャーを買収し、
商品化を検討。
マサチューセッツ工科大学のロドニー・ブルックス教授をリーダーとする
米政府のプロジェクトでは、約20億円の予算を割り当てられた
5つのチームが新技術を競い、1件を選んで実証段階に移行する計画。
量産すれば、非軍事用途へも転換は簡単で、侮れない相手に。
平和利用に徹する日本のロボットスーツは、ちょっとクール。
自動車やデジカメのように、洗練された日本製品として世界に広がってほしい。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090311.html
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