(読売 3月7日)
学生に勉強させるため、教員は奮闘を重ねる。
「○○君、今回はいいぞ。誤字に気を付けろ」、
「○さん、前回の成績が泣くよ。期待しているんだ」
大同工業大(名古屋市)の選択科目「教育社会学」の授業で、
曽我静男教授(61)が個々の学生に声をかけ、
学年末試験の答案用紙を手渡した。
後期の授業15回は終わった。
この日は答案を返すだけの“おまけ”で、午前9時からの1限目だが、
欠席者はいない。
答案用紙は、添削のペンで真っ赤。
受講生約70人の名前をよどみなく呼び、以前の成績や課題の提出状況、
最近の授業態度にも触れながらミスを指摘し、しかり、あるいは励ます。
満面の笑みもあれば、悔しそうにゆがむ顔もある。
「学生に勉強させるには、からくりが要る」と曽我さん。
その一つが、手渡しの答案返却。
「こんなに緊張する授業はほかにない。先生が名前を覚えていて、
いつ指されるかわからない」と1年の男子学生(19)。
毎回宿題も出し、次の授業で指名して15分間、発表。
誰が指名されるかわからない。
小テストも頻繁にあるため、予習・復習なしでは授業に出られない。
ただ厳しいだけではない。
課題図書を示す際は、持ちやすい新書サイズで価格は1000円以内。
入手できる書店も事前に確認し、所在地を配布。
学生が「売ってなかった」とあきらめてしまわないようにする気配り。
数々の工夫は、大学全体で10年前に始めた教育改革の過程で生まれた。
入試の偏差値は、40前後。
多くの学生が強い劣等感を抱き、勉強への拒否反応が強い。
欠席や遅刻、私語が目立ち、崩壊状態の授業も散見された。
2001年、新設の授業開発センター長に就いた曽我さんは、
いかに勉強をさせるかに知恵を絞った。
授業ごとに、学習到達目標を設定する一方、国内では当時ほとんど
例がなかったCAP制(単位の上限制)にも踏み切った。
1年で履修できる授業数を、従来の学生が取っていた約半分の
40単位までに絞り、きちんと自習させることを狙った。
授業も変わらなくてはいけない。
全教員に、授業公開を義務づけた大学憲章を制定。
公開授業は、ビデオカメラでも撮影、いつでも見られるようにし、
意見を交換し合った。
この間の取り組みで、遅刻や欠席、私語は減ったが、
3年前から単位を取れない学生の割合は増えている。
それを裏付けるかのように、1週間当たりの平均自習時間も、
全科目平均は1時間弱にとどまっている。
曽我さんの授業では約3時間に伸びたが、全学的に広がらず、
「これまでの工夫だけでは、太刀打ちできない現実も依然ある」
新年度に「大同大学」へと名称変更するのを機に、
勉強せずにはいられない新たな環境整備が始まる。
中学生からの英数国理の復習を入学直後に始め、
15人程度のクラスを2人の教員で担当。
学ぶ意味を、学生自身に理解させる新たな闘いが始まる。
◆CAP制
1年間、または1学期間に履修登録できる単位の上限を設ける制度。
単位制度は、学生の自学自習を基本精神としているため、
一定の制限を設けることで、授業のための準備学習をさせることを狙う。
一昨年11月の調査では、全大学の64%を占める453大学が採用。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090307-OYT8T00287.htm
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