2009年3月18日水曜日

学士力(5)学部横断 進化するゼミ

(読売 3月11日)

ゼミでの師弟関係が「考える力」を育てる。

「ゼミの武蔵」と異名をとる武蔵大学の演習室で、
朝から熱のこもった声が飛んでいた。
「論文に、『思う』『ようだ』はだめ。作文じゃない!」
経済学部の松島桂樹教授(60)が学生23人を相手に、
提出された論文の問題点を指摘。

1年生が対象の基礎ゼミ。
松島さんはグループごとの自由研究を通し、大学生としての基本――
自主的に学ぶ姿勢を身につけさせることを狙う。
学生は、それぞれのテーマに沿って調査や討論を重ね、
1月初め、ようやく論文提出にこぎ着けた。
プロ野球球団の経営について研究した男子学生(19)は、
「討論しながら論文を書くのは初めて。高校とは違う」と手応えを口にした。

別の演習室では、人文学部の福間具子准教授(34)が4年生十数人に、
「抽象概念の形成が未熟」と厳しい言葉を浴びせていた。
その裏には、巣立ちの時を迎えた教え子への愛情がある。
「うちの学生は素直でまじめだが、競争に慣れていない。
社会の厳しさを伝えたい」

同大のゼミは、前身・旧制武蔵高等学校の遺産。
1922年(大正11年)に始まり、49年に新制大学として開学した
現在の大学でも、1、2年は基礎ゼミ、3年生からは専門ゼミという
設計で引き継がれた。
学生自らが調べ、考える力を養う場として、緊密な師弟関係による
少人数教育は、最適と考えられた。
全体の学生数が約4000人という、大学の規模がそれを後押しし、
いつしか「ゼミの武蔵」と呼ばれるように。

しかし、現状に満足しているわけではない。
3年前に就任した平林和幸学長(60)は、改革の必要性を強調。
「ゼミは武蔵の宝物。だからこそ進化させる」

2年前に、人文・社会・経済の全学部横断ゼミを始めた。
都内の情報関連企業に、「中堅企業の採用活動を活発化させるための提案」
という課題を出してもらい、1年かけて、
ゼミの学生約50人が調査・分析を続けて、提言をまとめた。
その取り組みは、経済産業省の「社会人基礎力の育成・評価事業」にも採択。
横断ゼミは、学内でも「他学部生との討論や共同作業で視野が広がった」と
学生、教員双方から評価が高い。

伝統のゼミのてこ入れも進める。
従来、個々の教員に委ねられていた基礎ゼミでは、
論文の書き方すらわからないまま専門ゼミに上がる学生も現れ、
最低限、学ぶべきことを統一する基準を作り始めている。
専門ゼミも、経済学部だけが就職活動の早期化などを理由に、
3年までとなっているのを、4年も必修に切り替える。
いずれも、2年以内の実施を検討。

「昔と違って、今の学生は手をかけないと育たない。
ますますゼミの大切さが問われる時代になった」と平林学長。
自らの強みを前面に押し出す改革が、芽吹こうとしている。

◆私立は専任教員1人当たり学生21人

2008年度の学校基本調査によると、専任教員1人当たりの学生数は
私立21.49人、公立10.93人、国立10.22人。
前年度よりわずかに減った。
私立は10年前の25.95人に比べると、かなり手厚くなっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090311-OYT8T00296.htm

1 件のコメント:

Keiju Matsushima さんのコメント...

ありがとうございます。
私のゼミの記事をクリップいただき。