(読売 3月11日)
ゼミでの師弟関係が「考える力」を育てる。
「ゼミの武蔵」と異名をとる武蔵大学の演習室で、
朝から熱のこもった声が飛んでいた。
「論文に、『思う』『ようだ』はだめ。作文じゃない!」
経済学部の松島桂樹教授(60)が学生23人を相手に、
提出された論文の問題点を指摘。
1年生が対象の基礎ゼミ。
松島さんはグループごとの自由研究を通し、大学生としての基本――
自主的に学ぶ姿勢を身につけさせることを狙う。
学生は、それぞれのテーマに沿って調査や討論を重ね、
1月初め、ようやく論文提出にこぎ着けた。
プロ野球球団の経営について研究した男子学生(19)は、
「討論しながら論文を書くのは初めて。高校とは違う」と手応えを口にした。
別の演習室では、人文学部の福間具子准教授(34)が4年生十数人に、
「抽象概念の形成が未熟」と厳しい言葉を浴びせていた。
その裏には、巣立ちの時を迎えた教え子への愛情がある。
「うちの学生は素直でまじめだが、競争に慣れていない。
社会の厳しさを伝えたい」
同大のゼミは、前身・旧制武蔵高等学校の遺産。
1922年(大正11年)に始まり、49年に新制大学として開学した
現在の大学でも、1、2年は基礎ゼミ、3年生からは専門ゼミという
設計で引き継がれた。
学生自らが調べ、考える力を養う場として、緊密な師弟関係による
少人数教育は、最適と考えられた。
全体の学生数が約4000人という、大学の規模がそれを後押しし、
いつしか「ゼミの武蔵」と呼ばれるように。
しかし、現状に満足しているわけではない。
3年前に就任した平林和幸学長(60)は、改革の必要性を強調。
「ゼミは武蔵の宝物。だからこそ進化させる」
2年前に、人文・社会・経済の全学部横断ゼミを始めた。
都内の情報関連企業に、「中堅企業の採用活動を活発化させるための提案」
という課題を出してもらい、1年かけて、
ゼミの学生約50人が調査・分析を続けて、提言をまとめた。
その取り組みは、経済産業省の「社会人基礎力の育成・評価事業」にも採択。
横断ゼミは、学内でも「他学部生との討論や共同作業で視野が広がった」と
学生、教員双方から評価が高い。
伝統のゼミのてこ入れも進める。
従来、個々の教員に委ねられていた基礎ゼミでは、
論文の書き方すらわからないまま専門ゼミに上がる学生も現れ、
最低限、学ぶべきことを統一する基準を作り始めている。
専門ゼミも、経済学部だけが就職活動の早期化などを理由に、
3年までとなっているのを、4年も必修に切り替える。
いずれも、2年以内の実施を検討。
「昔と違って、今の学生は手をかけないと育たない。
ますますゼミの大切さが問われる時代になった」と平林学長。
自らの強みを前面に押し出す改革が、芽吹こうとしている。
◆私立は専任教員1人当たり学生21人
2008年度の学校基本調査によると、専任教員1人当たりの学生数は
私立21.49人、公立10.93人、国立10.22人。
前年度よりわずかに減った。
私立は10年前の25.95人に比べると、かなり手厚くなっている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090311-OYT8T00296.htm
1 件のコメント:
ありがとうございます。
私のゼミの記事をクリップいただき。
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