(読売 3月13日)
東京大学が、学生の討議力養成に本腰を入れる。
旧制第一高等学校本館で、国の登録有形文化財の東大教養学部1号館(駒場)。
駒場キャンパスのシンボルにもなっているこの歴史的な建物で、
入試の合間を縫って六つの教室が改装。
ほかの教室は、教卓に向かって50人分の机とイスがびっしりだが、
新しい教室は机をコの字形に並べてゆったり。
壁には小ぶりのホワイトボードがあり、机をグループ単位で並べ替えた時に使う。
暖色系の方が議論が弾むと、いすはオレンジ色、
机も明るいクリーム色。録画装置も備えた。
部屋の狙いは、東大生の討議力向上。
教養学部では新年度から、討議を主体にした授業を、
全学生が学期に1度は経験できる体制を取る。
2学年約6000人が学ぶ駒場キャンパスでは、1学期の授業が
約1200コマにもなるだけに、学期に1度といっても大がかりな取り組みに。
「討議させる授業に自覚的に取り組んでもらうため、
この教室を使ってみませんかと働きかけもしたい。
場を変えることで、駒場の先生たちの意識をからめ手から変えたい」と
教養学部付属教養教育開発機構の山本泰教授(58)。
新しい教室では、原則として授業見学を認めるという方法も考えられる。
背景には昨年3月、700人近い教養学部の2年生が答えた
「教養教育の達成度調査」
「学問的知識」、「論理的・分析的に考える力」、「知識や考えを表現する力」、
「他者と討論する力」など6項目が身についたかを聞くと、
「討論する力」だけが2割に届かなかった。
他の5項目は少なくとも5割近く、「学問的知識」は7割超。
「討議力は、何かを勉強する過程で身につけるハイレベルの力だが、
ここまで低いとは思わなかった。
本来、大学は知識を教える場ではなく、教員と学生が対等に議論して
新しい知を作り出す場だ」(山本教授)
2月、学生を集めた模擬授業も試みた。
ミラーリングと呼ばれる討議力養成の手法も体験。
1人が報告した内容を、もう1人が再説明することで、
ずれを観察し、表現力や聞く力を養う。
参加者に聞いても、討議する授業の経験の有無に大差があった。
今回の取り組みで、「身についた」を5割程度に引き上げるのが目標。
駒場キャンパスには2007年、最先端のハイテク設備を備えた
教室KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)もできている。
英語の論文の書き方を学ぶ授業では、
学生が書く英語の文章を、教員が同時進行でスクリーン上に引き出して
添削するといったこともできる。
文字通り、学生を能動的に授業にかかわらせる場。
教室を変えることで教育を変える――
小中学校などではすでに取り組まれてきたことが、
最高学府でも動き出している。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090313-OYT8T00241.htm
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