2010年3月4日木曜日

楽しい図書館(5)新聞活用 時事も美術も

(読売 2月9日)

新聞が充実した図書室で、NIEの授業を展開する。

資料や新聞の切り抜きで、分厚くなった思い思いの
「時事ノート」を手に、生徒たちが図書室に。
新聞5紙を購読している島根県立出雲商業高校では、
新聞を使う授業を図書室で行うことが珍しくない。

1年の現代社会の授業。
各自が関心をもったテーマについて、毎週二つずつ記事を
選んで張り、要約と意見を書いて提出。
生徒たちは、先生からもらった助言や課題について調べる作業。

「用語集、統計などを含め役立つコーナーも作ってもらったので、
そちらもうまく活用して。さあ民族大移動!」と岡田誠吉教諭(57)。

竹島領有問題、出雲そばの由来など、地元ならではの問題を
調べる生徒もおり、山本恵美子学校司書専門員(58)ら
図書班の教員が、他校からも参考資料を借り出すなどして準備。

次回発表を控えるKさん(16)が選んだテーマは、「現代人のうつ」。
「個人が気をつける問題というよりも、社会的な理由を考えたい」と、
Kさんに、教諭は、「不景気によって生活苦になったり、
人間関係が希薄化して孤立する人もいる。
そのあたりから、自分はこう思うというのをまとめたらどうだろう」

狙いは、生徒たちが世の中の問題に関心を持ち、
情報を整理する力、表現力を身に着けてもらうこと。
「最終的には、人の見方に対し、果たしてそうかな、
私は違うというようなやり取りができれば」

1年前、生徒たちに「新聞で見る欄は?」と聞いたら、
スポーツ、番組、広告などが多かった。
Fさん(16)は、「中学まではパラパラ眺める程度だったけど、
地元の話など興味のある記事は読み込むようになった」
新聞活用授業を通じ、新聞の面白さに気付き始めた生徒は多い。

2年の美術の授業も、図書室。
商業デザインを学ぶうえで、新聞広告が格好の題材と考える
高橋恭子教諭(52)が指示すると、生徒たちはあらかじめ考えていた
広告が載った紙面を、収容棚からさっと取り出してきた。

「みんなが選んだ広告を“自慢”してもらおうかな」
Oさん(17)が紹介したのは、1面大のスペースの真ん中に、
「さみしくなったら、おヘソを見よう」という標語とともに、
小さな人間が自分のおへそを見ている素描。
「空間をぜいたくに使っているね。何を言いたいんだろう」と教諭。
「隅に小さい字で、『あなたが一人じゃなかったこと思い出せば
きっと大丈夫 実感しよう絆』とあるね。どう感じる?」

豊かな発想やメッセージ性が、イラストやキャッチコピーに込められ、
生徒たちがそれぞれの発見を熱く語る。

図書室入り口のほか、購買部の前の廊下にも、
新聞を自由に閲覧できる机といすのコーナーが設けられている。
社会への窓となる、生きた教材を備えた図書室での授業。
生徒たちの目は、生き生きしている。

◆NIE(Newspaper in Education)

生きた教材として、新聞を教育に使おうという活動のこと、
新聞活用学習とも呼ばれる。
教育界と新聞界が協力し、20年以上組織的に進めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100209-OYT8T00264.htm

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