(読売 2月2日)
絵本の名前が付いた学校図書館で、児童は本に親しむ。
「ぐりとぐら」のキャラクターが、入り口で児童を出迎える。
「ぐりぐら図書館」。
東京都中野区立啓明小学校の図書館は、
児童が大好きな絵本の名前が付けられている。
「話のロウソクに火をともしましょう」。
図書館での1年生の授業で、学校図書館指導員の
米村和美さん(57)がおはなし会を始めた。
節分にまつわる昔話が始まると、約20人の児童から笑顔。
広い図書館にある「おはなしひろば」。
コルク材の床に児童がじかに座り、じっと聞き入る。
壁には、児童の絵などが飾られ、ぬいぐるみも置かれた
明るい雰囲気。
授業の終わりには児童らが我先にと、本を借りに列を作った。
「子どもたちは図書館が大好きです」。
担任の小山朗子主幹教諭(49)もうれしそう。
1997年、従来の図書館を拡張したのに併せ、
児童から名前を募って命名。
絵本「ぐりとぐら」の作者、中川李枝子氏から許可。
「楽しく、ほっとできる図書館に」。
絵本の名前を付けたのは、そうした思いが込められている。
そんな場所には、児童が楽しめる仕掛けがふんだんにある。
壁に張られた大きな野原の絵。
「ぐりとぐら」、「くまのコールテンくん」など、
好きな絵本の主人公を子どもたちに描いてもらった。
「子どもたちは、本を読んだ時の面白さを表現したいと思っている。
みんなで描いて、一つになればうれしいこと」
休み時間には、様々な学年の児童が絵を描きにくる。
「難しいかもしれないけど、頑張って読んでみてね」
壁に飾られていたのは、6年生が1年生に書いて送った本の感想。
友人に本の感想を書いて送る読書郵便は、
図書館内のポストに入れると、友人に届けてくれる仕組み。
一昨年、学校で見つかったカラスの巣も飾られ、
周りにカラス関連の本が置かれている。
こうすることで、関心も高まるとの狙い。
「楽しい場所なら、児童も図書館に来てくれる。
本を手に取ってくれれば、色々な世界が広がる」
学校図書館であるため、各クラスで週1回、授業で
図書館を活用するなど、学習に役立てる。
国語でジャンケンを学ぶ1年生には、世界のジャンケンが
載った本を紹介。
図工で読書感想画を描いたり、国語の授業で本のカバーや
帯を作り、図書館に飾ったり。
手製の「ぐりとぐら」のキャラクターを使い、年度初めには
全学年で図書館の使い方を学ぶ。
本の分類を学ぶことは、調べ学習の資料探しだけでなく、
将来にも役立つ。
本の貸し出しは、米村さんが手渡し。
その際、個々に合った本を勧めることも。
「読めたよ」、「楽しかったよ」。
本を返しに来る児童から、そう言われることが何よりもうれしい。
子どもたちにとって居心地のいい場所にと、
学校全体で取り組んできた図書館づくり。
「児童の心を育てる大切な場所。これからも充実に努めたい」と
橋浦義之校長(55)。
◆学校図書館指導員
中野区が、1995年から全小中学校に配置している非常勤職員。
図書館で図書の整理や貸し出し、読み聞かせなどを行う。
区では、教員免許か司書の資格を持つ人から選んでいる。
専門の講習を受けた教員が、図書館を使った読書教育などを
行うのが司書教諭となる。
米村さんは指導員だが、司書教諭と司書の資格を持つ。
◇蔵書や司書 整備不十分
今年は、国民読書年。
学校で読書や学習の拠点になる学校図書館だが、
必ずしも整備が十分とは言い難い状況。
「学校図書館の現状に関する調査」よると、国が定めた
公立小中学校の図書館の蔵書数の標準について、
達成した小学校は約45%、中学校は約39%(2007年度末)。
専門の講習を受けた司書教諭は、改正学校図書館法で
12学級以上の学校で置くことになったが、
全国学校図書館協議会の森田盛行理事長は、
「公立ではほとんどが担任などとの兼務で、
十分機能していない部分がある」
11学級以下では、配置自体が2割程度しかない。
学校司書については、高校では配置が進むが、
高校に比べ、図書館が小さい小中学校は4割程度と少ない。
森田理事長は、「読書を活発にするには、
専任の司書教諭と学校司書の配置が必要」
島根県立大学短期大学部の堀川照代教授(図書館情報学)は、
「まずは、図書館の雰囲気作り。
子どもたちは、自分たちの紹介文などが展示されていれば、
自然と目を向ける。
玄関や廊下の空きスペースに本を置いたり、読む場所にしたりと、
学校全体を図書館にしてしまう発想もいい」とアドバイス。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100202-OYT8T00239.htm
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