(日経 2010-02-26)
太陽から降り注ぐエネルギーは、1m2当たり約1kwと計算。
太陽光発電(太陽電池)は、そのエネルギーから電気を
作っているが、電気への変換効率は20%程度。
残りの80%以上は捨てている。
実にもったいない。
日本の最先端研究で、太陽光を100%利用できる可能性が。
危うく研究予算を打ち切られるところだった
スーパーコンピューターが、太陽電池の設計をやってのけた。
大気や海洋の変化の大規模なシミュレーションに使う
超高速スパコン「地球シミュレータ」。
高度情報科学技術研究機構(RIST)の手島正吾主任研究員らは、
原子の特性値から物質の構造や電気特性などを求める
「第1原理計算」という手法を使い、太陽光をすべて電気に変換する
太陽電池の構造を求める研究に取り組んでいる。
高速計算だけあって、その成果は1年で出始めた。
「地球のどこにでも豊富にある炭素だけで、作ることができる」
それを実現するのは、「マッカイ結晶」。
英ロンドン大学の結晶学者、アラン・マッカイ名誉教授が
数学的に推定、1991年に英科学誌ネイチャーに発表。
まだ誰も合成に成功していない、幻の物質。
マッカイ結晶は、炭素原子で構成する実在の球状分子
「フラーレン」から作れる可能性。
フラーレンを、立体的に積み重ねて全方位から圧縮すると、
計算上はお互いが結合してマッカイ結晶になる。
フラーレンは、炭素原子の数によってC78、C76、C74、C70、C60など
様々な種類が見付かっている。
原子数が減少するほど、フラーレンは縮小、
それで構成するマッカイ結晶は高密度になる。
手島主任研究員らは、フラーレンが縮小するほど、
太陽電池の電気特性値である「バンドギャップ」が小さくなる。
バンドギャップが小さくなると、反比例して電気に変換できる
光の波長が長くなる。
シリコン太陽電池を素通りしたり、跳ね返っていたりした可視光より
長い波長の赤外線光も利用できる可能性が。
シリコン太陽電池の下にマッカイ結晶を敷けば、
エネルギー変換効率は格段に上がる。
手島主任研究員は、その先にある「オール炭素太陽電池」実現を
目指している。
太陽光に当たる側から、紫外光、可視光、赤外光に対応した
マッカイ結晶を配置。
「アンコウのつるし切り」のように、太陽光をすべて食べ尽くす。
積層順を反対にすると、長波長側から光を外に逃がすので効果はない。
ここまでは、スパコンで求めた。
実際に、マッカイ結晶を合成することに。
RIST自体は、超高速計算の専門機関だが、
ナノ炭素研究所(上田市)の大沢映二社長(豊橋技術科学大学名誉教授)、
名古屋大学の篠原久典教授、信州大学の遠藤守信教授など、
著名な炭素物質研究者をメンバーとする研究会組織を持ち、
計算結果を物質合成につなぐ仕組み。
マッカイ結晶は、まだ計算上の物質だが、合成研究者と連携することで、
太陽光を丸ごと電気に変える太陽電池は、
近い将来に日本で開発されるかもしれない。
炭素だけで作れれば、資源が少ないと嘆く日本も困らない。
日本の資源で、世界制覇できる製品が誕生することに。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec100225.html
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