2010年3月6日土曜日

楽しい図書館(7)点字や絵人形で支える

(読売 2月11日)

障害のある子に読書の喜びを伝えようと、
特別支援学校で様々な取り組みが進む。

教諭が、いくつもの声色を使い分けて動物の鳴き声をまねると、
ホワイトボードに向けられた生徒の視線が輝きを増した。
「12番目に出てくる動物は何かな?」との問いかけに、
「イノシシ」と答える女子生徒。
教諭が隠していたイノシシの絵人形を、
ボードに張りつけると、女子の表情が大きくほころんだ。

知的障害がある児童生徒が通う鳥取県立白兎養護学校
図書館では、生活単元学習を活用した高等部の
「図書の学習」が行われていた。
生徒が食い入るように見つめていたのは、
絵人形を動かして物語を展開させるパネルシアター。
この日は、十二支がテーマ。

活字や音声だけでは理解が難しい生徒にとって、
視覚に訴えるパネルシアターは有効な教材。
月に何度も同じ話を繰り返すことにより、言葉を覚え、
先の見通しも立てられるようになっていく」。
司書教諭の児島陽子さん(49)。

知的障害の児童生徒は増加傾向にあり、
図書館を普通教室に転用する学校が多い。
全特別支援学校に司書教諭を配置し、公立には学校司書も
常駐させる鳥取県は、先進県として知られている。

児島さんは、小学部の担任も兼ね、図書館教育に携わる時間が
週に5時間確保。
「発達年齢や障害の状態に応じて、読書の楽しみを教えてくれる
人の存在が、知的障害特別支援学校でも不可欠」

視覚障害特別支援学校では、全盲から弱視まで一人ひとり
異なる見え方に対応、様々な図書が必要。
横浜市立盲特別支援学校では、墨字(活字)図書を点字図書、
録音図書、大活字本などへ変換する作業を、
33グループ約600人のボランティアが支えている。

学校司書の石井みどりさんは、「よりよい図書資料を作成するには、
専門的な技術を習得したボランティアグループと連携し、
受け入れる体制をつくることが重要」

拡大読書機や点字印刷機など、様々な機器が豊富にそろう
図書館には、好きな格好で読書を楽しめるカーペットコーナーも。
「作品に引き込まれると、何も聞こえなくなり、
家では夜中まで読み続けてしまうこともある。
図書館で新しい本を探すのは、楽しい時間」
小学部5年の藤本昌宏君(11)はそう言って、笑顔。

専修大学の野口武悟准教授(図書館情報学)は、
「情報獲得の困難を補う支援をする情報保障の観点からも、
特別支援学校で図書館が果たす役割は小、中、高校より大きい。
現状を比較すると、すべての面で遅れている」と批判。

一人ひとりのニーズに応じた読書活動を提供するために、
人的にも予算的にも、特別支援学校には
より手厚い措置が求められている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100211-OYT8T00259.htm

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