2010年8月15日日曜日

特集:内モンゴルの荒れ地に森と笑顔を 緑化活動40年・宮脇昭名誉教授

(毎日 8月8日)

40年にわたって、「ふるさとの森づくり」に取り組んできた
宮脇昭さんに、中国・内モンゴル自治区での植樹活動や
森づくりの意義などについて聞いた。

--内モンゴル自治区で植樹をする意義は?

宮脇 内モンゴル自治区では、森だったところが、
伐採や過放牧により砂漠化。
中国国内だけではなく、朝鮮半島や日本に飛来する黄砂の量が増えた。

黄砂の被害を防ぐ根本的な対策は、森をつくること。
植樹は、以前から取り組まれていたが、成功していない。
ポプラやニセアカシアなど、成長の早い木を植えたが、
土地本来の植物ではないから、長持ちしない。
私たちは、土地本来の植生の主木であるリョウドウナラなどを植え、
今では背の高さを超える木に成長。

--中国や内モンゴル自治区の方々の受け止め方は?

宮脇 植樹前、「日本から多くの人が植樹に来るが、
3年たったら看板しか残らない」と言われた。
実際に成功すると、本気になってきた。
内モンゴル自治区の政府は、今後も宮脇方式で植樹を続けたいと。

--1970年に始めた植樹活動から40年たつが、
研究者がなぜ植樹に取り組んだのか?

宮脇 私は雑草の研究後、ドイツで留学中に
潜在自然植生という考え方を学んだ。
人の手が入らない状態での植生。
いま見ている日本の植生のほとんどは、人によって変えられた二次群落。
潜在自然植生を残しているのは、各地にある鎮守の森。
鎮守の森を調べると、潜在自然植生が分かる。
1960年から10年かけて全国調査し、「日本の植生」という本を書いた。

潜在自然植生を踏まえた森づくりを、と主張したが、
行政も造園業者も相手にしてくれない。
そんな時、経済同友会での講演をきっかけに、
新日鉄から植樹指導の依頼が。
以降、100以上の企業・団体と「ふるさとの森づくり」を進め、
約4000万本の木を植えてきた。

--今では、林野庁などの官庁も宮脇方式を取り入れている。

宮脇 生きている間に、林野庁と一緒にできるとは思ってもいなかった。
造林のプロたちが取り組んでくれると、地域の環境保全や防災に
役立つだけではなく、地球規模ではCO2を吸収・固定し、
地球温暖化防止につながり、生物多様性を保全できる本物の森ができる。

--今後の抱負は?

宮脇 生物学的には人間は、120~130年生きられる。
私はまだ82歳、あと30年は木を植える。
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◇みやわき・あきら

地球環境戦略研究機関国際生態学センター長、
横浜国立大名誉教授。専門は植物生態学。
潜在自然植生理論に基づく植樹方法は「宮脇方式」と呼ばれ、
世界を舞台に植樹活動を展開。
06年、ブループラネット賞受賞。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100808ddm010040003000c.html

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