(2010年8月5日 読売新聞)
医師や看護師らが活躍する医療漫画が、
漫画の一ジャンルとして定着。
テレビドラマ化される作品も多いうえ、
いまや学術研究のテーマになるほど注目。
医療がテーマだったり、医師らを主人公にしたりした漫画173作品を
調べあげ、傾向を分析した論文を発表するのは、
東大医科学研究所の医師、岸友紀子さん(36)。
論文によると、医療漫画は1980年代後半から徐々に増え始め、
これまで約1割がテレビドラマや映画、アニメへと映像化。
岸さんは、「患者意識の変化で、医師が従来の聖職者から
身近な存在となり、医療がだれでも関心を持ちやすいテーマに」
最近の傾向は、臨床心理士や理学療法士など
医師以外の医療従事者を主人公とする作品が出てきたこと。
「医療漫画は、野球漫画やグルメ漫画と同様、定番のジャンル」、
18万冊の蔵書を誇る現代マンガ図書館の西智子さん(30)。
同図書館は昨年、企画展「医療マンガ傑作選」を開いた。
西さんによると、70~80年代の作品では、
超人的な技量を持つ医師が多く登場。
手塚治虫の「ブラック・ジャック」が代表例。
90年代以降、新米医師の成長を描く「研修医なな子」など、
等身大の主人公とそれを取り巻く人間ドラマが増えた。
最近では、医師不足や医療事故をテーマに採り入れた「医龍」、
「麻酔科医ハナ」、「最上の命医」などが、
「医師が見てもリアリティーがある」と評判。
昨今の医療漫画は、医師が監修したものが多く、
内容も専門分化してきた。
漫画研究家のヤマダトモコさんは、
「大人が漫画を読む時代になったのに合わせ、
内容の方も本格的でリアルさが追求されるようになった。
専門家が監修したり、実態を詳細に調べたりして
描かれた作品が増えている」
60~70年代、「巨人の星」を見てプロ野球選手を夢見た
子どもたちがいたように、若者の職業選択への影響も見逃せない。
東大の岸さんは、「私の周りでも、漫画の登場人物にあこがれ、
医師になった人は多い。漫画は、関心を持つきっかけになりやすい」
昨年テレビドラマ化されて大ヒットした「JIN-仁-」は、
幕末にタイムスリップした脳外科医の活躍を描いたものだが、
「JINの効果なのか、脳外科の希望者が増えた」と喜ぶ大学病院関係者も。
医療漫画のヒットが医師不足解消に一役、なんてこともありそうだ。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/5/123695/
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