(読売 2008年11月12日)
警察当局は、中国で日本人への臓器移植仲介事業を手掛けていた
「中国国際臓器移植支援センター」(本部・遼寧省瀋陽市)の
長瀬博之代表(52)について、週内にも
臓器移植法違反容疑で事情聴取する方針を固めた。
同センターの業務が、営利目的での臓器のあっせんを禁じた
同法に違反する疑いが強いと判断。
警察庁も今後、中国公安当局に捜査協力を要請する方針で、
日中両国をまたにかけた臓器提供ビジネスの刑事責任追及に向け、
本格捜査に乗り出す。
同センターは、2004年からインターネット上のホームページ(HP)で、
腎臓の移植希望者の募集を始め、申し込んだ日本人に、
中国人の臓器提供者をあっせん。
移植手術は、提携先の上海や瀋陽の病院で中国人医師が執刀。
HPの説明では、費用は手術代も含め腎移植が780万円以上で、
肝移植は1300万円以上に上る。
この事業を巡って、中国の瀋陽市公安局は昨年9月、
〈1〉法人登記の業務範囲の逸脱
〈2〉臓器売買を禁じる中国衛生省の関連規定違反--の疑いで
長瀬代表を逮捕した。
しかし起訴段階では、罪状が「虚偽広告罪」に切り替わり、
先月30日、瀋陽市中級人民法院(日本の地裁に相当)が懲役1年2か月、
罰金10万元、国外追放の判決を言い渡した。
刑期が今月10日に満了になったため、長瀬代表は11日夕、帰国。
成田空港に到着直後、読売新聞の取材に
「これまで108人の移植の仲介をした」。
警察当局では、中国の裁判で臓器移植の仲介行為が審理されていないことから、
同じ事件を2度裁くことを禁じた「一事不再理」にはあたらないと判断。
厚生労働省と協議のうえ、長瀬代表が中国渡航前に
神奈川県内に住んでいたことから、同県警を中心に捜査を進めることに。
国内の臓器移植希望者は1万人を超え、海外での移植を目指す人も多い。
厚労省研究班の2年前の調査によると、
中国では少なくとも106人の日本人が腎臓移植を、
14人が肝臓移植をしていたことが判明。
警察庁は、すでに国際刑事警察機構(ICPO)を通じ
中国側に捜査結果を照会するなど、
長瀬代表の仲介で移植手術を受けた日本人と
中国人臓器提供者の特定を急いでいる。
◆臓器移植法
1997年10月に施行された脳死の判定基準や移植手続きを定めた法律。
第11条で臓器の提供や仲介に伴って利益を受けることなどを禁じ、
20条には海外での同様の行為も対象とする「国外犯規定」がある。
違反すると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82828
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