(読売 2008年11月12日)
「中国では、臓器のあっせんを処罰する法律はない」、
「私は病院に指定された金額を支払っていただけ」。
中国で1年2か月の懲役刑に服し、国外退去処分を受けた
「中国国際臓器移植支援センター」の長瀬博之代表(52)は、
中国で108人の日本人の臓器移植を仲介したことを明かし、
「確かにビジネスだが、医師もビジネスだろう」などと正当性を主張。
しかし、フィリピンで昨年開始した臓器あっせんについては
「もうやめる」などと、あきらめたような表情を見せた。
--中国に進出した経緯は?
「瀋陽(遼寧省)で光触媒の塗料を扱う会社を経営していた頃、
日本の友人が肝臓移植が必要になり、調べると、
中国では多くの移植手術が行われていた。
1000人を超える臨床経験の医師がいる。
これだけのところなら、日本の患者も移植手術できるという前提で開始」
--これまで移植を仲介した日本人は何人か?
「108人。1年2か月間、拘束されている間、
妻に『非常に感謝している』との連絡があったようだ」
--臓器移植法に違反するとの指摘があるが
「中国には、臓器移植のあっせんをとがめる法律はない。
日本では待っていても移植はできない。
法律で許されている国があれば、そこへ行くのは当然。
私のやっていることは、もちろんビジネスだが、医師だってビジネスだ」
--何百万円もの金を払うから移植を受けられるのではないか
「私は病院の指定する金額を払って、日本人患者を紹介しただけ。
経費は受け取っていたが、経営はぎりぎりだった」
--こういう形で中国から出国したことをどう思う
「ものすごく残念。私にしかできない天職だと思っていた。
たくさんの患者が本当に涙を流して、
喜んでくれるのを見てここまで続けてこられた」
[解説]中国側捜査協力 立件のカギ
日本臓器移植ネットワークに登録して腎臓移植を待つ患者は1万人超。
しかし手術を受けられるのは、生体移植、心停止後の移植を含め
年間1000例程度で、海外に渡航して移植をする患者は後を絶たない。
中国で長瀬代表が逮捕された後も、長瀬代表と渡航移植を契約した
患者数人が別の渡航移植仲介業を探し、待機している。
臓器移植法を巡っては2006年10月、
「宇和島徳洲会病院」(愛媛県宇和島市)での生体腎移植の際、
臓器提供の見返りに現金30万円などを渡したとして
患者や内縁の妻が逮捕された事件以外、
同法違反で立件されたケースはない。
厚生労働省はこの事件をきっかけに、
親族以外の第三者から生体移植を受ける場合、
移植施設の倫理委員会で承認を受けることを求める指針を策定したが、
海外での「臓器移植ビジネス」に歯止めはかけられていない。
警察当局が中国での臓器仲介の捜査に乗り出すのは、
こうした現実を放置したままでは、「無償」、「善意」を前提にした
国内の臓器移植システムが崩壊しかねないからだ。
患者の救済を名目に高額な仲介料がやり取りされれば、
利益優先の悪質な業者がはびこる可能性もある。
立件には、臓器を提供した中国人を特定し、
移植を受けた日本人の臓器とDNAが一致することや、
仲介料の支払いがどこで行われたのかを確認する必要がある。
このためには中国側との緊密な捜査協力が不可欠で、
日中両国の捜査当局がどのように協力関係を築くのかが注目。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82827
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