2008年11月21日金曜日

授業を変える(10)学外の教職員と研修

(読売 11月15日)

「授業を変える」を合言葉に、大学の枠を超えた交流が広がる。

蔵王山麓にある山形大学寮。
全国から集まった大学教職員ら約60人が、窓外の輝く緑に目もくれず、
「学生の意欲を起こすにはどうしたらいいか」を熱っぽく語り合っていた。
教育力向上を目的に、山形大が7年前から毎夏開く1泊2日の合宿研修。
4年前からは学外にも門戸を開き、今年は他大学の教員が講師も務めた。

その1人は、前年の参加者だった東京工芸大学の大島武准教授(45)。
「アメリカ映画のように冒頭で心をつかむ」、
「発問は答えやすいように二者択一にするか、意見を聞くか」などと
授業の工夫を披露した。

教員になった12年前、学生に「つまんない授業」と批判されて以来の
努力の成果を惜しみなく紹介。
「ほかの教員の意見も聞きたい。自分の研さんになる」と意欲を語る。

参加者は、グループに分かれて大学の現状や自らの悩みを話し合い、
講師の話も踏まえて、学生が意欲的に取り組める授業を設計し、発表。
これ自体が授業のようで、「初めて教壇に立った時の気持ちを思い出した」
と語るベテラン教員もいた。

山形大は4年前に県内5校、今年は関東以北の35校と連携し、
同大が取り組んできた、学生による授業評価などの手法を伝えてきた。
「生き残るのが、社会と学生にとって良質な大学でなければ。
互いの枠を超えた切磋琢磨が必要だ」と山形大の小田隆治教授(54)。
大学淘汰への危機感がある。

愛媛大学は、全国の大学教職員約60人を集め、東京都内で2日間、
教員研修担当者の講座を開いた。
講師の1人、佐藤浩章准教授(36)は、
米国で教育力向上の研修に参加し、能を磨いてきた。

佐藤さんが、ピザや果物つきのランチ研修で参加者を増やした
米国の大学の例を紹介すると、参加者が笑った。
「大事なことですよ」と佐藤さんは少し気色ばんだ。
研修に積極的に参加する人ばかりではないからこそ、細かな気配りが不可欠。
参加者は、こうしたノウハウを学びながら、それぞれの研修計画をまとめた。
受講後に、「学長に提案する」と意気込む職員もいた。

信州大学が合宿研修を開いた。
提案者は山形、愛媛両大学の研修に参加した松岡幸司准教授(43)。
担当するドイツ語の授業での工夫が買われて、今春から研修担当に。
キャンパスが分散しているだけに、教員を集められるか心配していたが、
ふたを開けてみると、他大学からも参加者があった。
活発な意見交換の場に刺激され、「再度開いて」という要請も出た。

大学の教育力向上は、国の教育振興基本計画にも盛り込まれた。
「授業を変える」取り組みは、着実に根を広げようとしている。

◆教育振興基本計画

改正教育基本法で規定。
大学教育について、国が、教育力向上のための拠点形成や
ネットワーク化の推進など、大学の枠を超えた質保証の体制や基盤の強化を支援。
学士課程(学部教育)において、学生の専門分野にかかわらず、
共通に身につける学習の成果について明確化することも盛り込まれた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081115-OYT8T00235.htm

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