(読売 11月13日)
授業の改善計画書が力を発揮する。
「なぜ?説明して」。
近畿大学理工学部の岩崎光伸准教授(45)は、「基礎化学結合論」の授業で、
約70人の1年生に質問を繰り返した。
口頭で答えさせるだけでなく、板書もさせる。
クラス全員が目で見て理解できるようにするためだ。
考えさせる授業を心がけている。
座席は指定し、最前列には昨年度に単位を落とした再履修生を座らせる。
90分授業を前半と後半に分け、それぞれの最後に、
理解度を測る練習問題を課し、質問時間も設ける。
わからない部分を放置しない。
毎回、復習・予習が必要な宿題を課し、次の授業で提出させる。
こうした授業の仕方は、以前に自分で授業改善計画書に記した内容。
理工学部で授業を担当して約8年。
「高校の授業みたいでとっつきやすい」と学生から高評価を受け続けるが、
「さらに進化しないと」と表情を引き締める。
教員の「進化」を支える授業改善計画書は、担当する全授業について、
〈1〉授業で工夫した点
〈2〉授業で良かったと思う点
〈3〉改善を要すると思う点
〈4〉授業評価結果について思うこと――を記述。
改善計画は、学生の評価をきちんと受けとめたかが一目でわかる。
学部で冊子にまとめ、学内に置いて学生に公開。
学生の授業評価は8年前、評価結果に基づく改善計画の作成・公表は5年前、
理工学部の全教員に義務化された。
「学生に力をつけられない大学は不要。
教育に力を注ぐ教員を厚遇しないと、授業は変わらない」と強調する
宗像恵前学部長(67)が推進してきた改革の目玉。
授業評価が低い教員には、学部長の面談や指導を受ける義務もある。
4年前には、授業評価で上位5%に入った教員に給与5%分、
最大20万円上乗せし、2年連続で低評価の教員には賞与の減額を実施。
提案時に教職員組合は、学生による授業評価への不信感から反発したが、
最終的には妥結した。翁長博副委員長によると、
「上司との相性で評価されるよりはマシ」という意見もあった。
宗像さんは、授業評価の確度は高いと分析している。
どんなに高度な内容で宿題やテストが多くても、学生に質問を重ね、
理解度に合わせて進める授業は評価が高い。
“楽勝”の内容が、高評価とは限らない。
評価は無記名式だが、記名式で試しても結果はほぼ同じで、
学生はきちんと答えているとわかったという。
昨年度後期の評価の平均点は、
共通教養・専門・外国語科目とも8点弱(10点満点)。
いずれも5年前より上昇。
5点以下の授業は、25%から10%にまで減った。
来年度からは、同様の取り組みを全学に広げる。
学部の壁を超えたマンモス大学の改革に注目したい。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081113-OYT8T00190.htm
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