2008年11月19日水曜日

授業を変える(8)計画書作成 「進化」促す

(読売 11月13日)

授業の改善計画書が力を発揮する。

「なぜ?説明して」。
近畿大学理工学部の岩崎光伸准教授(45)は、「基礎化学結合論」の授業で、
約70人の1年生に質問を繰り返した。
口頭で答えさせるだけでなく、板書もさせる。
クラス全員が目で見て理解できるようにするためだ。
考えさせる授業を心がけている。

座席は指定し、最前列には昨年度に単位を落とした再履修生を座らせる。
90分授業を前半と後半に分け、それぞれの最後に、
理解度を測る練習問題を課し、質問時間も設ける。
わからない部分を放置しない。
毎回、復習・予習が必要な宿題を課し、次の授業で提出させる。

こうした授業の仕方は、以前に自分で授業改善計画書に記した内容。
理工学部で授業を担当して約8年。
「高校の授業みたいでとっつきやすい」と学生から高評価を受け続けるが、
「さらに進化しないと」と表情を引き締める。

教員の「進化」を支える授業改善計画書は、担当する全授業について、
〈1〉授業で工夫した点
〈2〉授業で良かったと思う点
〈3〉改善を要すると思う点
〈4〉授業評価結果について思うこと――を記述。
改善計画は、学生の評価をきちんと受けとめたかが一目でわかる。
学部で冊子にまとめ、学内に置いて学生に公開。

学生の授業評価は8年前、評価結果に基づく改善計画の作成・公表は5年前、
理工学部の全教員に義務化された。
「学生に力をつけられない大学は不要。
教育に力を注ぐ教員を厚遇しないと、授業は変わらない」と強調する
宗像恵前学部長(67)が推進してきた改革の目玉。
授業評価が低い教員には、学部長の面談や指導を受ける義務もある。

4年前には、授業評価で上位5%に入った教員に給与5%分、
最大20万円上乗せし、2年連続で低評価の教員には賞与の減額を実施。
提案時に教職員組合は、学生による授業評価への不信感から反発したが、
最終的には妥結した。翁長博副委員長によると、
「上司との相性で評価されるよりはマシ」という意見もあった。

宗像さんは、授業評価の確度は高いと分析している。
どんなに高度な内容で宿題やテストが多くても、学生に質問を重ね、
理解度に合わせて進める授業は評価が高い。
“楽勝”の内容が、高評価とは限らない。
評価は無記名式だが、記名式で試しても結果はほぼ同じで、
学生はきちんと答えているとわかったという。

昨年度後期の評価の平均点は、
共通教養・専門・外国語科目とも8点弱(10点満点)。
いずれも5年前より上昇。
5点以下の授業は、25%から10%にまで減った。

来年度からは、同様の取り組みを全学に広げる。
学部の壁を超えたマンモス大学の改革に注目したい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081113-OYT8T00190.htm

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