2008年11月17日月曜日

英皇太子はサイエンスがお好き

(サイエンスポータル 11月7日)

北澤 宏一 氏(科学技術振興機構 理事長)

チャールズ英皇太子は、サイエンス通で知られる。
東京・お台場の日本科学未来館を訪問された。
毛利衛館長が、天井から下がる巨大な球状ディスプレイ「ジオ・コスモス」に
映し出される未来の地球の気象変動をお見せした。

ジオ・コスモスは、館長就任の際、毛利さんのたっての願いで作られた装置。
スペースシャトルから見た「暗黒の宇宙に輝く青い地球」が、
毛利さんの世界観を完全に変えた。

当時、日本で開発されたばかりの青色を含む発光ダイオード100万個を使い、
明るいオールカラー表示が初めて可能に。
今、この未来館の巨大ジオ・コスモスは、
世界の科学館からうらやましがられている。

チャールズ皇太子は、ナノテクノロジーや地球環境について、
学会や市民講演会でも熱い議論を展開される論客。
今回は、科学未来館講堂で多くの聴衆に向けて
「人間による地球環境の破壊と気候変動の危機」と題して講演、
日本語で「いま、不言実行の時」と結論を述べられた。

皇太子は講演の中で、日本の省エネルギー技術のすばらしさに何度も触れて、
欧州と日本が協力して地球の危機に対処していくべきことを訴えられた。
講演の締めくくりには、ジオ・コスモスが登場。
「30秒の映像は、地球温暖化のペースが本当に警告していることを示す」
という皇太子の紹介に続き、2000年から2100年に向けての
地球表面温度変化のシミュレーションで、
6度の温度上昇を示す真っ赤になっていく地球の様子が映し出された。

英国ではこの10月3日、ブラウン首相による内閣改造が行われ、
新たに「エネルギー・気候変動省」がつくられた。
「気候変動の省ができた」ことは、21世紀の地球環境に対する
英国の思い入れの強さが表れたもの。

新大臣が、次の労働党党首とも目されるミリバンド外相の実弟で、
38歳という若さのエド・ミリバンド氏であることも注目。
今後、英国はこの外務大臣と気候変動大臣を務める、
若くて人気の高い兄弟政治家、チャールズ皇太子のコンビネーションによって、
地球環境を外交の表舞台に登場させていく。

「地球環境」は、いずれ私たちの毎日の生活の意識を形作る
基本的な規範となってくる。
外交においても、各国の地球環境貢献度が指数のようなもので示され、
輸出時の関税率が影響を受けたり、外交における錦の御旗としての役割を
果たしていくことが予想。

「地球環境イデオロギー時代」が到来。
チャールズ皇太子の今回の講演は、その先駆けのように思えた。

http://www.scienceportal.jp/highlight/0811.html#081107

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